日本人のソウルフードといえるおむすび。おむすびは今、フランス人の暮らしの中に溶け込みつつあるようですが、果たしてその理由は? パリで展開する「おむすび権米衛」を管轄するGonbei Europe代表の佐藤大輔さんに聞きました。(文 守隨亨延)
【今月のお客さま】佐藤大輔さん
この4年半でおむすびはオシャレな食べ物に
パリのお店についてまず教えてください。
2017年11月にパリ中心部オペラ地区にフランス1号店として「パリ・パレロワイヤル店」を開きました。2号店を今秋にレピュブリック地区にオープン予定です。
開業から4年半でパリのおむすびを取り巻く状況は変わりました?
変わりましたね。4年前はパリにおけるおむすびの認知度は低かったです。来店するお客さまも新しい物好きか、日本の漫画やアニメファンで作品の中でおむすびを知った方でした。ところが今はお客さまの層が平均化しました。フランス人の中で、おむすびというものが一般的になったと感じます。
おむすびのイメージは日本と同じですか?
いえ、フランスでは「オシャレな食べ物」として扱われているようです。パリ・パレロワイヤル店の周辺はセリーヌやケンゾーの本社があり、そこで働く方々もよくお見えになられますし、特にファッションウィークの時期になるとモデルさんがお越しになることも多いです。「おむすび屋ですがいいんですか!?」と思ってしまいます。バレンシアガのパーティー用ケータリングとして注文が入ったこともありました。
日本だと近年、炭水化物ということでご飯は避けられがちですが興味深いですね!
理由の一つは、おむすびの柔軟性の高さだと思います。すしは日本食の代表格として広まりましたが基本は魚ですよね。ヴィーガンやベジタリアンが増えている最近の傾向だと、生魚を食べられない人も多いです。しかし、おむすびは具を変えることで調整できますし、一方で肉食の方にも合わせることができます。
フランス人の味覚もどんどん変わっている
パリではどんな具が人気なんでしょうか?
サーモンやツナマヨは味をイメージしやすいという点でおむすび初心者から玄人まで人気がありますね。さらにエキスパートになってくるとスパイシーチキンやスパイシーツナといった辛い味を好む方が多いです。
フランス人は辛いものが苦手と言われますが?
以前はそうでしたが、フランス人の味覚は年々変わっています。今スパイシー系の具は日本人の感覚でも辛いなと感じる辛さにしているのですが、それでもフランス人のお客さまには食べていただけています。
おむすび屋自体もパリに増えましたね。
そうですね。おむすび屋でも2パターンあって、パリでは職人のように個人の顔が見える形でやられているお店が多いのですが、私たちの場合は個人を出さず、マクドナルドやスタバのようなメインストリームの立ち位置で営んでいます。ケバブなども競合です。
フランスならではの苦労も多いのでは?
困った経験には事欠きませんよ(笑)。閉店では秋田こまちを日本から玄米で輸入して店舗内で精米しているのですが、その精米機のベルトが切れそうになり、すぐ修理してもらえと日本の本社からは言われるのですが、その修理業者自体がフランスではなかなか来ないので自力でベルトを探して修理したりとか。普段からトラブル耐性があったおかげかコロナ禍のイレギュラーも何とか乗り越えられました!
今後の展開は?
パリに2号店を出すのと併せて、ドイツやイギリスなどにも進出の可能性を探っています。フランスで進めたように、まずポップアップ店を出して反応を見つつ認知度を上げて、実店舗を出す予定です。おむすびに関してドイツは、まさに4、5年前のパリのような状態。日本食はあるけれども、まだ認知度は高くないです。
これからさらに忙しくなりそうですね。
実は今、人手不足でスタッフ募集中です!各部門で活躍のチャンスはたくさんあると思います。これからパリに来る方、ぜひご応募ください!
Omusubi Gonbei Paris Palais-Royal
27 rue des Petits Champs 75001