6点の連作であるこのタピスリー(織物)「貴婦人と一角獣」は、15世紀――中世とルネッサンスの間に制作され、「クリュニーのモナリザ」と呼ばれているそうです。今回紹介するのはその中のひとつ「Mon Seul Désir(我が唯一の望み)」です。この連作は「五感(触覚・味覚・嗅覚・聴覚・視覚)」をテーマに1枚ずつ作られていますが、紹介する本作は第六感として捉えられ、「五感を制御する心」を表現したと考えられています。

 絵をよく見てみると、フレーズ「Mon Seul Désir」が書かれた青いテントが描かれています。これは他の5点にはないもので、道徳的な意味と同時に宮廷風恋愛も暗示しているのです(この宮廷風恋愛とは恋愛成就とは関係なく、肉体的な恋愛を目指す探求のこと)。この相反するような2つが共存しているのは中世ヨーロッパ、特にフランスの特徴かもしれません。

 一角獣(ユニコーン)は、キリストという聖なるイメージと、性的な意味のシンボルという2つの側面があります。つまり、一角獣は男性、貴婦人は彼が思いを寄せる女性です。タピスリーの注文主はルヴィスト家当主アントワーヌ二世。ブサック城にひっそりあったこのタピスリーの再発見に貢献したのは、ショパンの恋人としても有名なジョルジュ・サンドでした。時は19世紀ロマン主義の時代、神秘性を持つ中世という時代への関心が高まっていました。この発見からこのタピスリーの価値が見直され、クリュニー美術館に所蔵されたのです。


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妹尾優子

仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「 Lecture de l’après-midi 」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
https://note.com/tabichajikan/m/md750819c9bc7