今回ご紹介するのは、「ぶらんこの絶好のチャンス」。この絵が描かれた18世紀フランスでは甘美で曲線的なロココ様式が流行しました。ロココと言えば、マリーアントワネット、ポンパドール夫人のイメージ? そう、ロココはまさに宮廷サロン文化の代名詞ですが、由来はロカイユ (rocaille)というフランス語です。当時、庭に人口洞窟を作るのが流行し、その装飾物として使われた小石、貝殻、サンゴなどを指すのがロカイユであり、様式名にもなりました。絵画のテーマは、フェートギャラント(Fêtes galantes 日本語で雅宴画)の作品が多く、貴族たちが優雅に宴を楽しみ、恋人たちが甘く愛を囁き合っているような絵のことで、色合いも淡く優しい感じです。

 さて、英語では「Swing(ブランコ)」がタイトルなのに、フランス語だと随分違うのは何故でしょう。この絵は当時の貴族社会をよく表しています。ブランコを漕ぐ貴族女性は大っぴらに足をあげ、片方の靴を投げ出しています。後方にうっすらいる男性は彼女の夫。そして草むらの中で彼女の方を見上げている男性は彼女の恋人。ドレスを覗いて喜んでいるようにも見えます。この三角関係。なんだか・・・破廉恥、ですね。女性に注目すると、靴は官能の象徴、足首をあらわにするのは当時非常にエロティックな象徴でした。・・・するとタイトルも意味ありげに見えてきますね。実際、当時の貴族社会は形式的に結婚しても愛はなく、お互い愛人がいる。そしてそれも容認しているものでした(exポンパドール夫人はルイ15世の公式な妾!)。浮世離れして、少し浮かれているようにも見えるロココ文化ですが、貴族の贅沢な趣味というだけでなく、美術史においては深い意義を持つのです。


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妹尾優子

仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「 Lecture de l’après-midi 」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
https://note.com/tabichajikan/m/md750819c9bc7