パリから南西に高速列車TGVで走ること1時間半、ロワール川沿いの町アンジェにあるショコラティエ「ブノワ・ショコラ」のスペシャリテはスライスアーモンドをキャラメリゼしてチョコレートでコーティングした「キャラモンド」というチョコレート菓子。今号では同店を切り盛りするショコラティエール(女性チョコレート職人)のアンヌさんに日仏のチョコレート観を聞きました。

日本との付き合いはサロン・デュ・ショコラがきっかけ

ブノワ・ショコラとキャラモンドについて教えて下さい。


 ブノワ・ショコラは父ジルベールが創業したお店で、私で2代目です。今でこそショコラトリー(チョコレート屋)は多いですが、父がお店を立ち上げた当時は、チョコレートを専門で扱うお店はまだまだ少なかったんですよ。パティスリー(ケーキ屋)に含まれていることが多かったです。


パリにもお店がありますよね。


 はい、アンジェの本店の他にパリに支店を出しています。パリの支店は姉が担ってくれていて、海外とのやり取りなども姉であることが多いです。私より姉の方が、英語は得意ですから(笑)。


キャラモンドは三角が特徴的ですが何か理由が?


 偶然なんです。レストランのシェフをする友人が、カフェ・グルマンというミニサイズのデザートセットのためのチョコレートを考案してほしいと相談してきて、完成したのがコーヒーカップに立てかけやすい三角形のキャラモンドでした。


日本でも買えますか?


 バレンタイン時期に限定販売しています。今年も日本ではシャルル・グルマンなどでのオンライン販売と、髙島屋のアムール・デュ・ショコラに出店しています。


なぜ日本での販売に興味を持ちましたか?


 パリのサロン・デュ・ショコラに出展した際に、日本人のお客さまがキャラモンドを気に入ってくださったことがきっかけです。歯応えの良さが日本人のお客様の好みに合ったようです。最初は小さな量でしたが、少しずつ日本へ出す量が増えていきました。日本は有名なショコラティエが多く訪れていますし、その市場で私も自分のチョコレートを試したかったということもあります。

フランス人は大袋、
日本人は小分けが好き

日仏でチョコレートの好みは変わりますか?


 違いますし、日本人のお客様の好みもここ数年で大きく変わりました。フランス人はミルクチョコレートを好みませんが、日本人はとても好んでいましたね。しかし今はブラックチョコレートと量のバランスが取れています。あと日本人の特徴としてはホワイトチョコレートやルビーチョコレート(酸味のあるピンク発色のチョコレート)も好きですよね。


日本だとバレンタイン時期がチョコレートの繁忙期ですがフランスは?


 クリスマス、イースター、バレンタインの順です。私たちのチョコレートは工業製品ではなく手作りですので、繁忙期は本当に忙しく毎回とても大変です!そういえば、初めて日本を訪れた際にバレンタインデーでは女性から男性へチョコレートを贈る風習があると聞いて大変印象的だった記憶があります。フランスではカップル間でバレンタインデーを祝うことはありますが、プレゼントはチョコレートに限らず、また男性から女性に贈られることが多いですから。


日本から受けた影響などありますか?


 現在のキャラモンドのパッケージは、日本から随分インスピレーションを受けています。日本人のお客様は包み方にとてもこだわるからです。最初は透明な袋に入れただけで販売していたのですが、次に箱入りに、さらに内側に包み紙を入れ、最終的には片段内側上部に緩衝材も添えました。日本人のお客様のアドバイスにより、キャラモンドは少しずつ進化していきました。フランス人は大袋で買っていきますが、日本人は小分けを好みます。


アンジェ本店には自販機もありますね。


 当店は日曜定休ですし、また夕食に招待された時の手土産に、お店の閉店後に買って行かれるお客様もいます。コロナ禍前から設置していたので、コロナの外出制限時の時も自販機が活躍しました。

将来の計画は?


 日本では今までバレンタインデー前の時期に限った販売でしたので、クリスマスなどにも売ってみたいです。フランスから日本への配送が課題ですので、それ次第でしょうか。あとパリにも自販機を置いてみたいですね!

【ブノワショコラ】
https://benoitchocolats.com