パリ・オペラ座の落成式 1875年1月5日ヴェルサイユ宮殿 蔵

 正装した紳士淑女で溢れかえる大階段。当時の熱気と人いきれまで伝わってきそうですね。1875年のパリ・オペラ座の落成式の一コマで、フランスの画家、エドゥアール・デタイユによって描かれました。パリ・オペラ座といっても、初代オペラ座はルイ14世の時代に作られ、現在パリにある有名なものは13代目です。一番新しいパリ12区のオペラバスティーユと区別するため、設計者の名から一般的にはオペラガルニエと呼ばれています。

 オペラガルニエの建設は、第二帝政ナポレオン三世の頃、セーヌ県知事オスマンによって行われたパリ大改造計画の中、帝都パリのシンボルとなるべく贅の限りを尽くした総合芸術の殿堂として国の威信をかけて建設されました。
ファサードの装飾、大階段の大理石、天井画、劇場内の装飾。上流階級の人たちがめかしこんで、超一流のオペラ、バレエの鑑賞のために集いました。エドゥアールは、その雰囲気を見事に表現しています。
 彼は、祖父は軍関係の仕事、父はアマチュア画家という家に育ち、名門リセナポレオン、現在のアンリ4世校卒業後、画家の道を志しました。育った環境の通り、その精細な筆致で戦争画に秀でサロンでも評判になり、戦争画家として戦争にも同行し描きました。フランス人を鼓舞する勇ましいフランス軍を描写しました。
 ではなぜ今回紹介するような絵も描いたのか。それは彼の言ったこの言葉に凝縮されているように思います。J’aime mon pays autant que personne. 私は誰よりも自分の国を愛しています。彼にとっては戦争画もオペラ座の絵も国のため、愛するフランスの栄光のためだったのでしょう。


妹尾優子

仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「 Lecture de l’après-midi 」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
https://note.com/tabichajikan/m/md750819c9bc7