今月のお客さま 立花剛さん
コロナ禍で大きく変わった私たちの生活様式。グルメの町パリも、店舗を構えず配達のみで対応するレストランや、星付き高級レストランが持ち帰りメニューを始めるなど変化がありました。その中で再び注目されているのが健康食のイメージもある和食。パリのお弁当屋「BENTO&GO!」の立花剛さんに聞きました。
(取材・文 加藤亨延)
フランス人は甘辛の味が好き
パリでよく見かけるようになった「Bento(弁当)」という言葉ですが、すでにパリに溶け込んでいると思いますか?
当店を訪れるお客さまについては、そうだと言えます。ただ2014年の開店当初は、「弁当とは何か」を毎回説明していました。
フランス人にはどのお弁当が人気ですか?
鶏の照り焼きと鮭の塩焼きです。鶏モモ肉の唐揚げも出ます。唐揚げをアルファベットで書くと、フランス語の読み方に引きずられて「Karaage(カラージュ)」になりがちなのですが、その際は「ううん、カラージュじゃなくてカラアゲ」とお客さんとコミュニケーションを取っています。フランス語で「プレ・フリット」と書いてもいいのですが、「唐揚げ」と全く同義語でもないため、せっかくなら日本語読みで表示しようと思っています。
フランス人が好む味付けの傾向は?
皆さん甘辛が好きですね。そのため照り焼きは人気が高いです。鮭は一番知られている魚の一つなので定番です。
タラの幽庵焼きもメニューにありますが?
一度食べた人はリピートしてくれることが多いです。魚を調味料に漬けてから焼くという日本では一般的な調理法なのですが、フランスにはない方法ですから最初はイメージできない人もいます。
とにかく足で稼いで原価を抑える
パリでお弁当屋を開いて大変だったことは?
食材の調達です。日本だと簡単に手に入るものが高かったり、それをフランスの食材でどう代替するかを考えたりするのが難しいです。当初は各和食の説明も大変でした。ただ、今はお客さんも味を分かってくれるようになってきて、「本日のおすすめ」が理解できないメニューでも、信用して選んでくれる人が増えました。
お弁当1つで€12〜€13(約1500円)ですが、価格や仕入れの面で工夫している点は?
値段を抑えるために、仕入れ業者に頼らずなるべく自分の足で安い食材を探すようにしています。日本と比べて食材の価格変動が激しいので、同じものを定期購入していると急に仕入れ値が高くなってしまうことがあります。
あと、お弁当を入れるパッケージも原価で日本より3〜4倍かかっています。そのため日本の一般的なお弁当と比べたら価格設定が高く思えるのですが、決して儲けているわけではなく、利益の幅は日本と変わらないです(笑)。
日本のお客さまも来ますか?
いらっしゃいますよ。店頭販売はフランス人のお客さまが多いのですが、ランチ時の配達はパリの日本企業からの注文も多いです。あとコロナ禍の前は、日本人旅行者の方もいらっしゃいました。「両親と旅行に来ているんですが、親がフランス料理に疲れてしまって買いに来ました」とおっしゃる方とか。
パリでお弁当屋をしていて良かった点は?
フランス人のお客さまに、「日本で食べていたものと同じ味」「懐かしい」と言ってもらえたり、「日本のものより美味しい」という感想をいただいた際は嬉しいです。そして日本のお客さまに当店のお弁当でほっとしてもらった時も、パリでお弁当屋をやっていて良かったと思います。
【BENTO&GO! République】
18 Rue Notre dame de Nazareth 75003 Paris