どの国にでも歴史は長かれ短かれ「建国」で始まり、「亡国」で終わってしまう。フランスの場合はベルバラの舞台になった革命時代以降、王国や帝国など多種多様な政体を経て1958年に第五共和国として生まれ変わったのは周知の事実。

 しかしフランスの歴史自体はそこから始まったと言ったら笑われるだろう。日本史の始まりを明治維新や文明開化にしてしまうと同じくらい愚かしいからだ。

 国の歴史が長ければ長いほどなかなかそのルーツまでには辿れない。資料がない限り史実は怪しまれるのだ。昔はもっとシンプルだった。宇宙自体がビッグバンから生まれたのではなくある創造神の手によって突然に作られたことに皆納得していたし、国自体は伝説的な王(だいたいムキムキの長髪野郎)、あるいは全知全能な神(だいたい浮気性のある飲兵衛)に作られたと大勢の人々が盲信していた。古代ギリシャや皇帝ローマの古典によく出る神話の一種だ。

 ところで、フランスの歴史はクロヴィス1世という王で始めさせる専門家がほとんどだ。驚異的な力を持ち、ハゲの心配すらなかった彼は1500年前に実在したが、当時日本が「邪馬台国」と呼ばれていたのと同様に、まだ現在の面積を占めてなかったフランスは「ガリア」と呼ばれてたし、パリはただの小さな村に過ぎなかった。ガリア人がどんな民族でなぜあの有名なカエサルに敗れたなど細かい話を知りたい人には塩野七生先生の名作シリーズをお勧めする。第一古代ローマの長い歴史も勉強になるし、現代フランスのルーツとその繋がりも見えてくるかもしれない。クロヴィス1世自体に関してはいくつかの逸話以外何も残されてないのでどんな王だったのか分かりきれないけれども、一応「その王の人生を聞いて泣かぬフランス人はその名に相応しくない」と言われるほど歴史的に重要な人物であるし、パリをこの国の首都にしたのは彼なのでそれだけで大したロン毛だったとは言えよう。


塩野七生「ローマ人の物語」新潮文庫 (43巻)

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Rémi BUQUET

フリーランス翻訳家

buquetremi@negoto.fr