【今月のお客さま】 モンシャートル・ブリュノさん

南仏ニースと北海道の室蘭の緯度がほぼ同じって知っていましたか?そんな室蘭にある料理学校「北斗文化学園インターナショナル調理技術専門学校」で副校長を務めるモンシャートル・ブリュノさんに、将来の三つ星シェフを目指す日仏料理人の卵たちの様子と、そこから垣間見える文化の違いを聞きました。

(文 加藤亨延)

日仏を足して2で割るとちょうどいい

まず学校とフランスとの関係について教えてください。

 本校は、北海道でも古い料理学校で、ニースにある国立ポール・オジエ観光調理専門学校やリヨンのポール・ボキューズ学院などとの提携を通して留学生を相互に受け入れ、日仏の架け橋となる人材を育てています。他にもベトナム、ロシア、台湾などの学校と交流しています。

モンシャートルさんは、なぜここで働くことに?

 フランス人の教師を探しているということを人づてに聞き、18年前に日本に来ました。日本語はボルドー大学の日本語学科で学びました。

学生の授業への取り組み方で日仏の文化的な違いは感じますか?

先生が調理の見本を見せた時、日本の学生は先生の教えを忠実に守り、まずそれを習得しようとします。フランス人の学生は、習ったことにすぐ自分なりのアレンジを加えようとします。

日仏「あるある」ですね!

これは、フランス人の先生の目には、日本人の学生はとても素直で教えやすいと映りますし、日本人の先生からは、フランス人の学生は授業に積極的だと映ります。ただ、一方でそれは「言われたことしかやらない」「教えた通りにやってくれない」ということにもなりますので、両方足して2で割ることが、できればちょうどいいのかもしれません(笑)。

教育システムも日仏で違いますよね。

 日本は、よほどのことがなければ、年齢と共に進級し卒業できるシステムになっています。フランスでは、できる人は飛び級をして、できない人は何度も同じ学年を繰り返します。そのため日本人の学生は「手を繋がないと進まない」、フランス人の学生は「止めないと先走る」傾向があります。

悪い面も知ることで初めてその国を理解できる

日仏はお互いに「憧れ」を抱き合う国ですよね。

はい、フランスに憧れる日本人は多いです。またフランス人も、例えば私の世代はテレビで日本のアニメを見て、そこから日本に対する理想のイメージがありました。しかし、初めてそれぞれの国へ行ってみて、観光、学生、仕事と滞在身分と目的も変わることで、少しずつ感じ方も違ってきます。

理想から現実に変わっていくということですね。

フランスで、日本人は礼儀正しくお互いを尊敬し合う民族だと思われています。それは間違っていませんが、一方で日本の社会には厳しい面もあります。フランスは個人主義の国。しかし日本には、周囲に意識を払って迷惑をかけないようにするための、社会の見えないルールがいっぱいある。それらは、なかなか直接教えてもらえず、たくさん注意され経験して、そこから学べます。そういう、お互いの好きなところ嫌いなところを知って、そこから双方の良い面を取り入れられる料理人になれるようフォローしています。

外国での生活を経験して人間としても厚みが出ますね。

そうですね。ただ、そうは言っても人間なかなか変われるものではなく、「フランスに戻っても礼儀正しくいたい」と言っている学生も、フランスで再会したら「フランス人に戻ったな」と思うことは、しばしばですが(笑)。どの学生も理想の国で様々な経験を積み、苦労しながら日々成長しています。


北斗文化学園】 

http://www.hokuto-bunka.ac.jp/