【今月のお客さま】
アポロニア・ポワラーヌさん
ポワラーヌの2代目女性社長は
父譲りのチャレンジャー
かの有名パン屋さん「ポワラーヌ」社長の、アポロニア・ポワラーヌさん。昨年アメリカで発売された著書が、フランス語に翻訳されたばかりです。同時に、パン作りのオンラインスクールも開始。ニューヨークの学生時代に突然両親を事故で失い、急遽メゾンを継いで20年、今アポロニアさんは頼もしい経営者兼職人として活躍しています。
(取材・文 Keiko Sumino-Leblanc / プレスイグレック)
コロナ禍で知った多くの大切なこと
コロナ禍を経験しパンの捉え方は変わりました?
あらゆる活動が停止した外出制限中に、必要最低限のパンを作る私たちは継続を許された数少ない業種でした。長い行列をしてパンを買いにくるお客さま、そして卸先を失った原材料の生産者のために、卵や野菜の販売をはじめたりもしました。そんな中で、これまで私が大切にしてきたことの価値が、より強化された気がします。
オンラインスクールを始めたそうですね。
昨年の外出制限(ロックダウン)中に、身近な人たちからの要求に応えてオンラインレッスンを開催しました。それがちょうど昨年、アメリカで私の著書『ポワラーヌ、雑穀からパンへ』が発売されたことなどと重なって、アメリカのオンラインスクール「マスタークラス」で講師を務めることへ発展した形です。プロ陣営に支えられたプラットフォームで、パンの歴史や製造技術を伝えることができることを、とても光栄に思います。
「マスタークラス」といえば米ヴォーグ誌編集長やジョディー・フォスターなどが講師陣にいます。
雑穀と発酵から生まれる、身体を作る滋味あるパン。その真価を伝え分かち合うことが、いかに重要であるかを、コロナ禍で認識ました。その点でも、「マスタークラス」は最良のチャンス。自分が実は教育熱心だったという発見も、コロナ禍で得たことの一つです。
憧れの国、日本へもう一度パンを
バゲットが年内にユネスコ無形文化遺産に登録されそうですね?
この件に関しては、私はちょっと懐疑的です。バゲットには天然酵母パンのような長い歴史はありませんし、それに第一、現代を生きる私たちがようやく取り組み始めた「継続可能、サスティナブル」の観点からも外れた食品です。日持ちもしません。
ポワラーヌにはバゲットはありませんよね。
酵母で発酵させたパン、日持ちするパン、人々の身体を作ってきたパンを製造しています。とはいえ、論争を起こすつもりは全くありませんよ!
ポワラーヌのパンを日本で買うことはできる?
90年代はポワラーヌのパンを日本に空輸して、銀座のデパートで販売していましたが、現在は行っていません。その後2000年代になると、新世代のパン屋が日本に多数上陸し、美味しいパンが日本でたくさん製造されています。とても喜ばしいことです。
ポワラーヌも日本に再上陸する?
現在真剣に準備しているところです。日本に敬意を抱いている者の一人として、日本で何かを始めるならいい加減なことはしたくないのです。オンラインショップという方法もあれば、日本にアトリエを構えるという方法もありますが、いずれにせよ最良の形を取りたいです。どうぞお楽しみに!