子どもの頃は誰もが影響されやすい。親や兄弟をはじめ、先生または同級生やアニメからも学ぶことは多い。誰にも借りを作らず一人でこそこそ働き出世する経営者の姿は米国で成功者の見本として掲げられがちかもしれないが、子どもはやはり周りから助言や助けを得てこそ一人前の大人になるのだ。

 そういう意味で教育は未来の柱の一つだとよく言われるが、読書はその延長だと考えたら小さな頃から読む習慣を身につけた方がよいと言っても決して過言ではない。

 フランスで小学校に上がる子ども達は毎日「宿題」に頭を抱えるようになると同時に、日本人がドラえもんやアンパンマンの絵本で読み書きを楽しく勉強するように、こちらの伝統的なキャラクターの冒険でフランス語の正しい発音やスペルを無意識にでもマスターできるようになる。

 戦後からここ10年前まで小さな女の子に好まれるキャラクターは誰だとフランス人に聞いたらザ・優等生である『マルティンちゃん』という答えが必ず返ってくるだろう。料理や家事に手芸など昔専業主婦によく求められたことを徹底的にできる上、性格の大人しい彼女は現在フェミニストたちの天敵でありながらも半世紀の間に数えきれぬ程の女の子に夢を与え続けてきたのは事実である。少々保守的な価値観に満ちた絵本であることは否定できないが、一方マルティンちゃんの冒険を読めば自立した女性像のように捉えられないこともないから結局何かもが視点次第ではないだろうか。

 長い間かなり人気だった彼女の絵本は年に一本のペースで出版されていたが、2011年に作者が没後マルティンの時代が終わったのではないかと懸念されていたが、今月になんと10年ぶりに新作が発売され、今回は観光客の大好きなルーブル美術館が舞台になっているようなのでフランス語を学ぶ日本人には間違いなく今年の欠かせない教材になるだろう。


「Martine au Louvre」

日本語訳:未定


Rémi BUQUET

フリーランス翻訳家

buquetremi@negoto.fr