日本でお墓というと、幽霊やら妖怪やらがウヨウヨする忌み嫌われる場所、とは言わずとも、あまり長居するところではありませんが、パリ市民にとっては公園のような役割を果たす憩いの場だったりします。
ミーハーな人にとっては有名人の墓巡りができる観光スポットであり、歴史好きの人にとっては立派な史跡でもあり。僕の場合、友人4名が眠るモンマルトルの墓地へ毎月行くのだけれど、そこには椿姫のモデルとなったマリー・デュプレシや画家のドガ、映画監督のフランソワ・トリュフォー、歌手のダリダなど、多くの有名人の墓地があり、入り口で配布されるマップを片手に墓巡りをする人が多く見られます。またベンチでひたすら読書をする人など、それぞれがそれぞれの楽しみ方をしていて、墓地の在り方が日本のそれとは大きく異なるかも。
それで、僕のお墓参りは計3カ所、それぞれが離れた場所を巡るため、ゆうに1時間はかかります。有名人の墓巡りをしたり、ベンチに座ってのんびり過ごしたりする余裕はありません。ただ、帰り道近くにあるフランス革命時代の画家ジャン・バティスト・グルーズの墓は、半ば意識的に目の前を通って墓をしげしげと眺めます。というのは、僕が蚤の市イベントで扱う商品に、彼が描いた小間使いの肖像が使われていたりすることがあり、身近に感じられるから。また、80~90年代に良く聴いていたレ・リタ・ミツコのギタリスト、フレッド・シシャンのお墓は偶然に一度だけ通り掛かりましたが、その時は亡くなったばかりで墓石が無く、今度はしっかりと挨拶に行きたいと思っています。まぁ、墓の中にご本人が居るわけではないでしょうが。19世紀に作られた家型の墓が並んでいて、歴史を感じさせる雰囲気の中で、喧騒から離れて無になれる。そんな貴重な時間を過ごせるはずです。是非お試しあれ~。
トモクン
トモクンという名の45歳。在仏21年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。
●友くんのパリ蚤の市散歩