留学をはじめワーキングホリデーや出張でフランスに来たことのある日本人は星の数ほど…いないと天文学者にすら言わせないほど、ネットはパリ旅を語るブログに溢れている。
インスタグラムではモナリザ前でモナリザより歯を見せて笑う日本の女子大生の写真も多ければ、シャンゼリゼ通りを歩きながらユーチューバー風で配信する早口男子も決してレア者ではない。学生には少年の頃からずっとPSGの試合を生で観戦したかったサラリーマンもいれば、女性誌に紹介されがちのおフランスに魅了され、何もかも捨てた元派遣もいる。
皆はそれぞれの事情を経てこのセーヌ川にたどり着く。その中で日本と高低差ありすぎて耳キーンてなる人もいるかもしれないが、少なくとも死語になっているはずの「パリ症候群」に苦しめられず済むだろう。
一方日本にいくフランス人も年々に増えてるので、なんちゃってジャポニズムに関するしょうもないエッセイも増えている中、時には非常に新鮮な視点で日本の生活を描写する本も出版される『IVRE DU JAPON』(原題『私はカレン。日本に恋したフランス人』(祥伝社)」ほどユーモアのある作品は本当に珍しい。漫画家の旦那と二児の子を持つフランス人記者のカレンは26歳の若さで日本に渡り、それ以降の滞在を振り返る。店員さんの対応や若者のファッションなどで異文化を感じたエピソードが豊富で面白い。
当時まだ赤外線ですら情報交換できなかったフランスに対し、携帯文化が凄まじかった当時の日本はまるで違う次元の国のように感じたという。日本橋の上に高速道路が走ってるのを見た時も相当の衝撃を受けたらしい。数知れぬ映画の舞台になったセーヌ川でも同じような風景が想像できなかったからだろう。無理はない。そもそもそこに高速道路があればポンヌフの恋人はイチャイチャせず呆気なく別れただろう。街並みはともかく、フランスに似てるところも多いのでパリでビザの手続き関係で苦労した日本人には是非お勧めしたい。
『IVRE DU JAPON』
JEAN-PAUL NISHI 著
Rémi BUQUET
フリーランス翻訳家