【今週のお客様】采女 宏美 さん

フランスで知らない人はいないと言われるほどメジャーなコンテ。今回はフランス東部のスイス国境に程近いジュラ山脈一帯の限られた地域でのみ作られるコンテチーズについて、歴史からオススメマリアージュまでコンテチーズ生産者協会の采女さんにお聞きしました!

1000年前から作られているチーズ

実はコンテチーズはあまりなじみがないのですが…。


 フランスではすごくメジャーなチーズで、どの地域のお店でもほぼ置いてあるハードタイプのチーズです。日本でもチーズプロフェッショナル協会(CPA)の会員さんの投票では「好きなチーズNo.1」に選ばれたチーズ好きの間では大人気のチーズです。


ずばり、コンテチーズのお味は?


 日本人が食べやすい味です。クセが少ないわりに旨味が強く、複雑なアロマがあります。コンテは添加物・着色料・保存料は使わず、牛のミルクがそのままチーズになり、色や味の調整をしません。プロセスチーズはいつも同じ味ですが、コンテは熟成度合いや作られた時期で味が違うんです。若い熟成のものはミルクの風味、熟成が長いものはナッツ、さらに熟成が進むとスパイスの風味がでることも。食べる度に新しい発見があるチーズですよ。

歴史あるチーズと聞きましたが?

 1000年前頃から作られていたようです。昔は冷蔵庫がなく、夏の間得たミルクを長い冬に食べられるように、長く保存できる大きなチーズ(直径60センチ、重さ40キロ)を作り始めたんですね。今も基本的には昔と同じ作り方で作っています。


どんな方法で作っているんでしょうか?


 コンテはとても大きなチーズなので1軒の農家だけでは作れないんです。40キロのチーズを作るには400リットル以上の牛乳、つまり牛20頭のミルクが必要です。そこで地域で協力して周囲のミルクを集めてコンテを作り、そこから協同組合ができ、酪農家、チーズ工房、熟成庫と3つの分業制を続けてきました。地域全体で作るのが特徴的で、とても平等なやり方だと思います。また絞ったミルクは過度な冷蔵や冷凍をせず、24時間以内にチーズにします。あえて複数のミルクで作ることで複雑な味を出せるんですね。ミルクを凝固させるのは、子牛の胃袋を乾燥させたものを昔と変わらず使っています。

味噌にぎり、お茶漬けにも!?

現地のチーズ文化はどんな感じでしょうか?


 一度、CPAの方たちと生産地ツアーに行きましたが、生産者の方々は誇りを持ってコンテを作っている印象で、東洋のチーズマニアの私達にもとても親切で熱心でした。コンテチーズ生産者協会の方の自宅では、食後に5種類程のチーズの塊を出してくれました。普段からチーズをたくさん食べるんだなと興味深かったし、どのチーズもおいしかった!何種類かのチーズを常備しているそうです。コンテは塩分も少なく、カルシウムやたんぱく質も豊富なので、肉や魚代わりのたんぱく源としてコンテ+野菜やフルーツだけの食事も多いと聞きました。


采女さんは元々チーズ好きだったんですか?


 いいえ。身近な食品PRに興味があって今の会社に入ったら、偶然コンテやイタリアのパルミジャーノ・レッジャーノの担当になりました。「色々なチーズを食べたけど、やっぱりコンテが一番美味しい」とCPAの方々が口々に話すのを聞いて興味が湧きまして。だんだんその魅力に惹かれてCPAの資格も取りました。


オススメの和のマリアージュは?


 スライスしたコンテを味噌にぎりにのせてトースターで少し加熱するとコンテがとろ~っと溶けて絶品ですよ。お茶漬けやたまごかけごはんにコンテをのせても合います。市販のミルで挽くタイプの山椒の実をぱらっとコンテに散らすのも味変としておすすめ。デザートには薄く切った羊羹をコンテで挟むと「あんバターサンド」みたいな乳製品のコクのある甘しょっぱさが味わえて本当に美味しいので騙されたと思って試してみてください。


お酒はどうでしょう?


 同郷のジュラワインの白がもちろん合いますが、同じ発酵モノで旨味もあるので、日本酒もいいですね。お茶でもお酒でもいろいろなマリアージュを楽しめます。コンテはチーズ専門店、輸入食材店や高級スーパーなどでも置いてあります。下のサイトも含めてぜひチェックしてみてくださいね。


【コンテチーズ生産者協会】https://www.comte.jp/

*フランス産AOP(原産地呼称保護)チーズの中で生産量No.1
*AOP=限られた地域内で、厳しい規定に準じ伝統的製法で作られた製品を保証するEUの制度。