科学の進歩のおかげで人類はとんでもないことをやり遂げてきた。
宇宙ロケットはもちろん、ウォッシュレットもなかなか役に立つものだが、4DのAV映画まで作りやがった。本当にすごいぞ、人間ってやつは。欲に満ちすぎていて惑星ひとつだけで満足するはずがなかった。常に新しい道を開こうとするから。その延長でトイレットペーパーよりケツをもっと清潔にする方法が見つかるのは当然、時間の問題だけだった。人間の発明力は尊敬に値する。とはいえ4Dの大人向けの遊びは道どころか視界が開かれすぎだろう。本来片手で満たせる欲には少々トゥー・マッチ。
しかし人間のこういう「無駄な努力」が嫌いではない。ギネス世界記録は思いもしなかったようなしょうもない記録満載だ。野球バットを指に立てて100メートル最速記録を達成しようとする者は半導体を開発したのと同じ種類の生き物だとは信じがたいのだ。何より技術が進めば進むほど、この世はますます便利で楽しい場所になっていく。一方、お月様はグリーンチーズでできていることや地球自体が平らであることを本気で信じ込む連中がいる限り、少々救い難い場所のままである。
仕方ないことも仕方ない。水族館でイキイキしたカニを見て「旨そう」と連発する日本人の客もいるし、満月を見て急にカマンベールが食いたいと思うフランス人がいても不思議ではない。同胞の食いっぷりの良さからするとむしろその勢いで全員宇宙に旅立ってない方がおかしいかも。
しかし科学がいかに進んでもわからないことはまだ山ほど残されており、好奇心旺盛の謎解きには未来も楽しい。人間はなぜ誕生したのか、隣の家のおばさんはなぜいつもノーパンでマルシェに行くのか。当分解かれそうもない謎が多い。近所のパンティ事情はそのマダムしか答えられないのと同じく、人間はなぜこの世にいるのかという理由、いわゆるレゾンデートルは皆それぞれ生きるうちに見つかるはず。三度の飯よりしっくりくるあれを一旦把握したら自分もとんでないことをやり遂げるはず。と言うわけで、少年達よ大志は抱いてもいいけど5DのAVだけはやめとけ。
『無駄なマシーンを発明しよう!~独創性を育むはじめてのエンジニアリング』
藤原麻里菜 著/登尾徳誠(ニャンパス株式会社)監修
技術評論社
Rémi BUQUET
翻訳家・通訳者
contact : buquetremi@negoto.fr