本誌ノアゼットプレスの著作『パリに住みたくなったら読む本』が出版され、僕もパリコレの会場について書いていますが、今回はその中で触れられなかったことを補足的に書きたいと思います。
 ちなみに写真は、今年1月にロエベのメンズコレクションのショーが行われた、フランス共和国親衛隊宿舎内の馬術練習場。第一次世界大戦中に亡くなった将官『バッテスティ』の名前が付いています。遮るものが無く、会場が広くて様々な作り込みが可能で、内装もクラシカルで美しいため、ここ最近はロエベのメンズの会場として採用されています。元々馬具メーカーであるエルメスも馬繋がりでショーを開催したことがありますし、屋外でしたが、J.M.ウェストンがパーティの会場に選んだこともありました。国が管理している建築物であるため、普段は入れません。


 そのロエベが長く会場として使っていたユネスコ本部も、通常立ち入ることのできない場所。美術愛好家にとっては見所が多く、イサム・ノグチによる庭、展示場所を巡って激怒したためサインをしなかったピカソの壁画、ジャコメッティの彫像など一級品揃い。一般公開されていない場所に足を踏み入れる特別感を招待客が味わえるわけです。
 各ブランドは、いかに非日常的な雰囲気の中でスペシャルなショーを見せるかに腐心しています。20年程前のシャネルのドキュメンタリーで、当時のアーティスティック・ディレクターであるカール・ラガーフェルドが、スタッフが半年前から準備していた会場にダメ出しをし、一瞬にして計画がひっくり返る様子が映し出されていました。会場によってコレクションのイメージが左右されるため、会場選びはとても重要。そうして、一般に開放されていない会場が多く使われることになるのですが、警察や省庁などの協力が無ければ成立しません。さすがはファッションの国を自認するフランスです~。


トモくん

トモクンという名の45歳。在仏27年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。

●友くんのパリ蚤の市散歩 
http://tomos.exblog.jp