テレビが普及し始めてからかれこれ70年近くが経つ。その間にどの出来事があったかを軽く振り返るとわりと長い期間である。和暦で言うと年号が2回変わった。以前は新聞とラジオに頼っていた人間は現在、基本的にテレビではなくネットから情報を得る傾向にあるが、配信サービスの延長で画面の時代が終わったとはまだ言えないような気がする。アイドルやお笑いは相当美味し
いビジネスである上、今だに多くのドラマが作られ、それなりの視聴率を占める。とはいえ次世代は一体どのメディアの力を借りて情報を手にいれるのか想像できる者は間違いなく将来の億万長
者になる可能性大。要らない情報が氾濫するこの時代に少しだけ電報に戻ってもいいのではないかとひっそり願う自分はまだ当分金銭的に苦しいだろう。
この「魔法の箱」が出回ってから地上波でとめどなく放送されてきたコンテンツの9割くらいはクソ…えーと、消えてもきっと誰も気にしないと思われるが、真のテレビっ子にだけではなくテレビは誰にでも多かれ少なかれ影響を及ぼしてきただろう。子どもの頃に見たアニメは翌日学校の話題になったのと同じく、同僚や友達に会うと韓流ドラマやお笑いのネタで話が弾む大人は少
なくはないはず。ドラマ『HERO』を観てキムタクと同じ服を着ようと単純に思った人も、正義感を身につけて検察官を志そうとした人もいるだろう。芸人の生活に憧れて「テレビに出たい」と夢見ていた子ども達は今どうやら「ユーチューバーになりたい」と言うらしいが、根本的な動機は昔のままで変わってないだろう。要は容易にお金を稼ぐことと他人から評価されたいことくらい。
昔は何かを成し得てから人は有名になっていたが、現在ほぼ何もしてないのに知名度の高い人が増えていて違和感を感じる。彼らもそれなりに次世代に影響があると考えたら早くこのテレビの時代に終止符が打たれるよう願いたいかも。
【今月の一冊】
『テレビドラマは時代を映す』
岡室美奈子 著
ハヤカワ新書
【編集部info】
著者の岡室さんは、早稲田大学文化構想学部の教授であり、前早大演劇博物館館長! 日本のテレビドラマを語らせるならこの人! という方。読書人には程遠い編集部は、早速Amazonで(!)
本を検索、目次内容をチェック。『鎌倉殿の13人』『Silent』『カーネーション』等々私も知ってるあの名作ドラマが語られてます! 新書なので読みやすそうだし、長雨の季節におウチで楽しむ1冊に加えるのは如何でしょう?
Rémi BUQUET
翻訳家・通訳者
【Contact 】buquetremi@negoto.fr