7月はいよいよパリオリンピックの開幕。既存のインフラを活かし、サスティナビリティをコンセプトとする今大会は、シャンゼリゼ通り、シャン・ド・マルス、ヴェルサイユ宮殿、そしてエッフェル塔など錚々たるモニュメントの下、様々な競技が行われます。
 開会式は、各国の選手たちがボートに乗ってセーヌ川をパレード。パリの東、オステルリッツ橋から出発、サン・ルイ島、シテ島を回り、エッフェル塔のふもとイエナ橋まで行き、トロカデロ広場でフィナーレ。その間、ノートルダム大聖堂、ルーヴル美術館、ポンヌフ、オルセー美術館など名所を通過。オリンピックファンでなくとも楽しめそうです。


 今こうして、エンターテインメント的に楽しんでいるオリンピック。その昔、紀元前8世紀頃は4年に1度行われるオリュンピア大祭という神ゼウスに捧げる儀式でした。群立する都市国家間では争いが絶えず、しかし神聖化されたその儀式の年
だけは休戦となりました。参加者はギリシャ人男性のみ。しかも肉体美を神に捧げるため競技は全裸。なんなら、衣服を身に纏う方が恥ずかしいくらい。ギリシャ彫刻がほぼ裸なのはそういう理由もあるようです。
 今回の作品は、当時のギリシャ文化をよく現したミュロンの作品、円盤投げ。彼自身は、紀元前460 ~ 450年の人とされ、オリジナル作品は残っておらず、複製は世界にいくつかあるようです*。
 古代オリンピックを近代へ蘇らせたのは、近代オリンピックの父、フランスのクーベルタン男爵。オリュンピア大祭に感銘を受け、世界中の人々が参加できる大会にし、競うだけでなく国際交流、世界平和の役割も持たせました。公用語にフラ
ンス語が使われるのはそのためです。写真の作品はその一つ、ローマ国立美術館所蔵、制作年は紀元前120年と推定されとても貴重です。


妹尾優子

仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「Lecture de l’aprèsmidi
」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史
ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
【HP】 https://note.com/tabichajikan/m/md750819c9bc7