何がって? 1990年から毎年夏に必ずやっている「フォール・ボヤール」という、フランス西海岸の大西洋に浮かぶ要塞を舞台にした超人気アドベンチャーゲームショーの放送。老若男女問わずフランス人は誰だって見たことがあるはず。そのテーマソングを口ずさめる人も少なくないだろう。とはいえ、今年はオリンピック。しかも今回の五輪のために世界中の闘志満々の選手達がこのパリに集まってくるので、かなりアツいといえば、天気の話だけではない。こんな歴史的なイベントが行われる時にテレビを見ている場合ではないと思いきや…謎の抽選制のせいで好きどころか多少興味ありそうな競技の席は容易に予約できない上、相当お金を出さないと手に入れらないので、やはりまだリモコンをしまう時が来てない。
セーヌ川で行われる開会式ぐらい当然無料で見られるとは聞いていたが、100年に一度のイベントにふさわしく100年に一度降るか降らないような土砂降りの雨の予報だったので結局家でフルショーとワインを堪能した。シテ島の在住者なら自分の窓から眺められてすごかったと思うけど、それがやりたくて地面師に合った人もいたのかなとふと考えてしまう、ネットフリックスドラマの影響で。
所詮こんな素敵な街の名所を無条件に利用できる前提で良いものを絶対に見せてもらえると期待していたが、予想は外れなかった。保守的な自分からするとちょい長すぎるパーツを省略して欲しかったし、ロンドン五輪みたいにもう少しポップカルチャー的なキャラクターは見たかったけど、何より無事に成功に終わって良かったと思う。こんな大雨の中に自分の出番を忍耐強く待った選手達をはじめ、全力でがんばったスタッフの皆さんには金メダルをあげたい気持ちは山々あるけれど、そうするならいまだに濁っている例の川に飛び込んだトライアスロンのアスリート達には「キン」(菌)以外も与えないとアンフェアすぎるような気がする。
『フランス流のやり方』
レジス・ドゥブレ著
ガリマール出版社
Rémi BUQUET
翻訳家・通訳者
Contact buquetremi@negoto.fr