今月のお客様 江藤英樹 さん

2024年3月に代官山にオープンした「PAYSAGE――HidekiEto」。店名はフランス語で風景・景色を意味し、懐かしさや優しさ溢れる洋菓子で人気を集めているお店のシェフパティシエを務めるのが江藤英樹さん。幼少期をイギリスで暮らし、東京でも数多のフランス人オーナーのレストランでシェフパティシエとして渡り歩いてきた江藤さんにパティシエになるまでと、フランスについても伺いました。

原点は母のケーキとヨーロッパの暮らし

お店で使うフルーツはご自身で農家さんに出向くこともあるとか?

この前は農家さんから連絡をもらってスモモ(ハニーローザ)を取りに行ったんです。その前はスタッフ全員でイチゴを収穫にも行きました。僕はレストランパティシエが長くて、その経験から素材に
こだわっているんです。
 素材に関しては、日本にはまだまだおいしいものがあるので、きちんと現地まで行って見た上で、僕たちはそれを大切に使って、おいしく提供する。お客様にもその思いを伝えられるとお互いwin-winじゃないですか。僕の中では当たり前になっているのですが必要なことだと思います。

小さい頃からパティシエになるのが夢でしたか?

最初はバイオリニストになりたかったんです。5歳の時に自分で習いたいと言ったらしくて、高校卒業まで習っていました。7歳くらいまで父の仕事の都合でイギリスに住んでいたのですが、僕は英語もしゃべれないのに、現地のバイオリンの先生とコミュニケーションとっていたらしいんですよ。


イギリスでの思い出は?

よくラズベリー狩りに連れていってもらってましたね。すごく美味しかった。お店のボタニカルなデザインも、イギリスの家の近くの植物園をイメージしています。当時は母親が家でよくお菓子を作ってくれて、それが嬉しかったですね。お祝いの時によくケーキを食べていて。実体験から仕事につながるという感じでしょうか。そこが原点なのでうちのお菓子は家庭的な優しさがあるのだと思います。

+アルファで人を喜ばせたい

パティシエになりたいと思ったのはいつ?

本当は音大に行きたかったんですがピアノができずに諦めたんです。その時にはモノづくりに関わりたい気持ちだったので、ケーキ作ろうかなと。僕は人を喜ばせるのが好きなんですよ。別にパティシエやバイオリニストでなくてもよかった。子どもの時もサプライズが好きで、親が寝てる間に朝ご飯つくってじゃーん! と驚かせたり。だんだんエスカレートして実はお昼ご飯もあります!みたいな。たとえばですけど(笑)。それは仕事にも活きていて、お客さんの期待値を超えていかないと、と思うんですよね。パティシエも面白いですよ。

そのあと、調理学校へ?

どうせやるなら設備も規模も違う大阪の辻製菓の本校に行こうと。その後、洋菓子の発祥であるフランス菓子がやりたくて、二年次に辻製菓のフランス校へ。半年は学校に通い、半年間はスタージュ(研修)で現地のお店に放り込まれるわけです。フランス語は学校で少しやりつつも、現場に入ると自然と身につくものですね。


スタージュはどうでした?


楽しかったです。僕は好きですけどね、フランクな外国人のスタルが。仕事にしても人生楽しんでる感じがします。僕が研修したのは南仏のカンヌで、みんなテラスで朝から飲んでたり、開放的で雰囲気もよかった。フランス人の友達もたくさんできましたね。日仏では現場の雰囲気が違いますか?

ちょっと違うかもしれないなあ。今はだいぶいいと思いますけど、昔はもっと厳しかったから。フランス校は現地を見て勉強できるのでいいんですが、日本の現場で通用しないと意味がないんですよ。日本ではお店の中で計量や販売からスタートしますし、思っていたのと違う、といって挫折する子が多いです。僕の学年は1000人いましたが、今でもパティシエを続けているのは数人ですね。

現地のおすすめレストランはありますか?

モナコにあるアランデュカスのレストラン『ルイキャンズ』は感動しました。結局そこに感動して、『ベージュアランデュカス東京』で日本のキャリアをスタートさせたんです。

フランスへの思いと、これからやってみたいことは?

フランス、好きですよ。僕が今まで働いていたところは、みんなフランス人オーナーのところでしたし。お店にフランス人が来てくれると、フランス語で話してみたくなったり。これからやってみたいことは特にないです。平和でいてくれれば!


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