誰も興味ないかもしれないけれど、2025年春夏パリコレクション総括
妙な立場に置かれているファッション、あるいはパリコレです。
一昔前は、注目ブランドを皆が追い続け、そのブランドが提案するルックに自分のスタイルを合わせる、という消費者側が受け身の傾向にありました。でも、今は個々の嗜好に合わせて各人が能動的に服を選ぶ時代。世の中には様々なブランドが存在し、まとまったトレンドが生まれにくい状況で、それに伴い、各都市で行われるコレクションへの注目度も風前の灯火です。日本でパリコレのニュースが流れたとしても、○○のブラ
ンドのショーにこんなセレブが登場しました、みたいな類のものばかりで、服に言及することはほぼなし。パリコレで発表される服が、基本的に富裕層向けとなっていて、一般人からは縁遠い存在になっているのも問題なのかも。
古着が急ピッチで浸透している現在、手垢の付いたものをまとうことに抵抗の少ない人々が一気に増え、一向に新品が売れず。再販市場は大盛況だけれど、その一方でファッション業界はますます厳しい立場に置かれ、負のスパイラルに突入しているのかもしれません。それは日本でもフランスでも、状況は全く一緒。
とはいえ、相変わらず華やかだった2025年春夏パリコレクション。大きな鳥かごをグラン・パレに設置したシャネル、ショーのためだけに1250個のトランクを作製してランウェイの床に敷き詰めたルイ・ヴィトン、200人のモデルを登場させたリック・オウエンス。そんな大掛かりなショーは、行政の後押しのあるファッションの中心地、パリ以外の都市では成立しません。それはそうと、今季は70年代風のルックや花柄が多く登場し、大戦のなかった自由を謳歌していた時代への憧憬を無意識に表現していたのかも、と思わせました。でも、まとまったトレンドとなると、とても拾いづらいシーズン。毎回のことですけれどね。ということで、トレンドなんて無視して、好きな服を着て下さい~。
トモクン
トモクンという名の45歳。在仏27年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。
連載中コラム
- Blog『 友くんのパリ蚤の市散歩 』