日常の音
美味しい焼き芋
外旅行は、五感を刺激してくれる。突然日常から離れた環境に置かれ、見慣れているもの、聴き慣れているものがなくなり、全てが新鮮に感じる。国や文化によって変わる「音」も、その旅行の思い出として記憶に残る。初めて日本で旅行した時、印象に残ったのは青信号で流れる鳥の鳴き声だった。
また日本は夜になると、道からいろいろな不思議な音が聞こえてくる。2度目の来日、短期間のホームステイをしていたが、夜にずっと気になる音が聞こえてモヤモヤしていた。誰かが繰り返し何かを叩く音を出しながら何かを唱えていたけど、一体これはどういう意味…? 後から「火の用心」の伝統を知って、あの時の謎が解けた! 3度目の来日では、宗教のうたに聞こえる石焼き芋の移動販売車に出会った。ずっと頭に残るこの「いしや〜きーいも〜」のうたや、拍子木の「キン・キン」など、日常生活の中で日本独特のこういう音を聞くと特別感があってわりと好き。
逆にフランスの懐かしい街中の音は何だろう。今思い出せるのは、実家の田舎町にある教会の鐘の音。日常的に聴き慣れていると鳴っていることさえ気づかなくなることもあるけど、1日の流れる時間を告げ、どこか温かみも感じる。時間ごとに鐘の音が響くフランスの生活から、夕方5時にスピーカから音楽が流れる東京の日常へ。火の用心や焼き芋トラックはまだいいけど、耳が取れそうな大音量を出しながら走り回る広告宣伝車、名前を連呼してうるさいブレインウォッシュにしか聞こえない選挙カーだけはやめてほしい…。
早朝の教会
リラ
東京で翻訳者としても活躍する30歳のフランス人女子。持続可能な社会の実現に向けての活動もする。趣味は編み物とベランダの植物の世話。
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