今月のお客様 門倉未来さん

南仏ミディ・ピレネー地方に暮らすデザイナーの門倉未来さん。日本でお仕事をした後に渡独、2021年にはベルリンから一家でピレネーへ移住されました。日仏Mixedである娘さんの教育や、「半農半デザイン」を掲げるご自身のお仕事に至るまで、根ほり葉ほり聞いてきました! 今までとは違う新しい暮らしを考えている方、必読です。 (取材 編集部)

山のコミュニティは面白い!?


住んでいるのはピレネーのどのあたりですか?


アリエージュ(Ariège)県にある住人80名の小さな村ですが、イタリア・ベルギー・モロッコ・イギリス・オランダと多文化な村です。

移住したきっかけは?


2011年から娘の幼稚園卒園まではデザイナーとしてベルリンにいました。幼稚園最後の年はコロナでほぼ自宅謹慎でしたし、小学校からはドイツ語で義務教育が始まってしまうので、引越すなら今! ということで。


なぜピレネーだったのでしょうか?


山あるところ水あり。日本でも気候変動や飢饉のたびに人は平地から山に避難した記録もある通り、山があれば人は生きていけるんです。それに若干不便な山のほうが人もクリエイティブで面白いかなと。都会では無理でもピレネーの山小屋なら土地付きでもなんとか買えそうでした。ベルリンからキャンパーバンで学校見学ツアーをする中、ピレネーはまるで八ヶ岳にきたような懐かしさで一目ぼれしました。


ピレネーの暮らしは?


村はみんな仲良しです。子どももたくさんいて、登山や乗馬もできるし、徒歩圏内で子どもが十分楽しめる。村の託児施設には都会から多くの子どもが来て休暇を過ごします。湧水、野菜、森で育てた動物など、食材も力強くて美味しいです。


8歳の娘さんの教育についてはどうですか?


娘は日仏のMixedだし正直すごく可愛いので、日本ならちやほやされて高慢チキになるかもとリアルに心配で(笑)。実際日本は美の基準が一択だと感じるので、こっちのほうが女として人生の選択肢が広いかなと。ここは歴史的背景からも異文化に対し
開放的だし、英仏デモクラティックスクールの存在が決め手でした。学校は5~18歳までで生徒数は80名程度。生徒が自主的にカリキュラムを組みます。私も生徒の依頼で忍者のサバイバル術や日本語を教えています。

自家製ラベルを貼った栗味噌。使い方もラベルに記載している。


「おすそわけ」を生なりわい業に!?


半デザインのほうは?


ブランド名やストーリーを含めたブランディングを中心に手がけているのですが、日本の仕事がほとんどで、クライアントの9割方が育児中の母親です。家族向けの大阪のグロッサリーFood Orchestra、松本市の母親向けフードデリバリー mama eats、
東京の素材コスメ GOLEM、育児中の女性採用に積極的な兵庫のQA三宅酒造など…..女性の声を実現していく仕事が多いです。


半農はどうですか?


うちは電気も水道も下水もないオフグリッド暮らしで、土地も戦前に蕎麦栽培と放牧地に使われていた貧しい土地でした。でも今では豊かな栗森で、食べきれないほど収穫できます。栗食の歴史は原産地である南欧のほうが日本より古いんです。加工品
も多彩で参入障壁が高いのですが、塩味の保存食品は見たことが無かったので栗味噌はどうかと試してみました。大豆味噌とは色も風味もかなり違いますが、しっかりと栗の香ばしさや甘さがある。ジビエとの相性が最高です。フランスの暮らしに合ったレシピも記載して今夏くらいから地元で販売予定です。


今後やっていきたいのは?


どれくらい「おすそ分け」が生業になるかを試そうかと。地産の素材から、必要な物、作りたい物を少し余分に作って売る。その収益分岐点を見極めてみたいです。デザイナーとして、常に未知の領域を学んで繋げてゆく事は生業だったので、その学びの楽
しさを人とシェアすることを今度は生業にできないかと考えています。例えば山岳文化というキーワードで、世界中の山岳保存食をピレネーで繋いで、料理教室や体験宿、展示ワークショップに展開しても楽しそうですね。


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