シャルトル大聖堂/シャルトル
サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏

果てしなく続く平野の中に突如現れる高い塔は巡礼者たちの灯台になるようにと小高い丘に建立されたという。世界遺産シャルトル大聖堂。中世キリスト教の世界を完全な形で残しているとされ1979年フランス初の世界遺産に登録された文化財の一つ。教会自体の歴史は古く、700年代にはこの地にあったと言われています。
 1194年の大火で大半の聖堂が焼け、現在の建物は再建されたもの。しかしファサードは被害が少なくほぼ12世紀半ばのまま。シャルトルはゴシック建築の代表とされますが、12世紀半ばはまだロマネスクからゴシックへの過渡期。ロマネスクの質実剛健な趣きも残る聖堂です。左の小塔は、16世紀に改築が行われ少し豪華になっています。右はロマネスク、左はゴシックという極めて珍しい両塔です。ロマネスク教会の建築の特徴は、石造の天井を支えるため壁は分厚く広く、そのため窓は小さめ。
 ゴシック教会は、石造ですが、高い天井や大きな窓を支えるためにフライングバットレスという建築方法を採用するようになります。大聖堂の建物の外側に見られる突き出た補強用の構造のことです。それもデザインの一部として昇華され、ゴシック建築の特徴となっています。教会を見る時、そんなところに注目するのも面白いですね。
 また、シャルトルといえばステンドグラスも有名。残っている物の多くは12〜13世紀のもの。特に澄んだシャルトルブルーと言われる青いステンドグラスは、その色を出すため当時中東までコバルトを買い付けに行っていたそうです。パリから電車で約50分で行ける世界遺産。800年の時を越え、いまも残る美しい佇まいに会いに行ってみませんか。


妹尾優子

仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「Lecture de l’aprèsmidi
」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
【HP】 https://note.com/tabichajikan/m/md750819c9bc7