今月のお客様  佐藤 弘一さん

パリでの経験が活きるセネガルでの起業

世界にはフランス語を公用語とする国が29カ国あるうち22カ国がアフリカ。そんなフランス語圏が広がる西アフリカで電気と通信を届ける事業に挑戦しているのが佐藤弘一さんです。佐藤さんはフランスで会社を立ち上げ後、日本でも起業。その後はアフリカのセネガルで現地法人を運営する国際企業家です。

まず佐藤さんの現在について教えてください。


 フランス、日本、セネガルの法人3社の社長を務めています。現在、西アフリカの未電化村落に通信と電気を届ける「ツミキプロジェクト」という事業を立ち上げています。


具体的にはどういうプロジェクト?


 太陽光パネルと蓄電池、Wi-Fi機能を一体化した携帯可能な「ツミキスマートキット」という機器を開発し、セネガル国内の未電化村落の診療所へ導入します。夜間早朝の安全な医療体制などを広げることが目的です。
パリと東京の次はセネガルで起業していますが、 なぜアフリカだったんですか?
 西アフリカ諸国はフランス語圏であるため英語ではビジネスが成立しづらく、外国企業の参入壁が高い気がします。フランスの旧植民地だったことから商習慣や考え方がフランスと似ており、パリで経験した苦労や危機管理を現地で応用できたからです。


現地の日本に対する印象はどうですか?


 旧宗主国である白人に対しては負の感情を抱えている部分はあります。その中で日本人が、英語ではなくフランス語を使いアプローチをかけることは好印象です。技術立国という日本に対する良いイメージもありますね。ただ、日本側の進出支援が上手くいっていない面もあります。


具体的には?


 文字情報と現場のギャップもそうですし、公的機関やコンサルが日本から企業を現地へ押し出しても、実際のビジネス感覚に沿ったサポートができていないことが多いです。セネガルは発展中の国ですので、規則がきちんと整備されていない部分があるのも事実。参入には常に柔軟な姿勢が求められます。

ツミキプロジェクトでは未電化村落に電気と通信を届けます。現地の通信事情を教えてください。


 高速通信は首都ダカールにしかありません。首都でも少し郊外に離れると無くなります。そのため、地方の村々に太陽光発電と通信機材をセットで提供することにより、現地の課題を解決しようとしています。現在は関西電力と一緒に実証実験を行っています。


セネガルの人々の印象は?

 温厚で優しいです。天然資源が豊富ではないため、争いなども国内でありません。「テランガ」という、もてなし文化があり日本とどこか近いものを感じますね。フランスのエスプリが生きているのか、個人の考え方が尊重され対等で、フレンドシップも取りやすいです。そして子どもたちの笑顔がとても純粋無垢です!


アフリカでの事業にどんな意味を見出していますか?


 生きる目標が見つかったと思っています。私はフランスへ行き、現地での仕事や生活を通して価値観が変わりました。もし未電化村落に電気と通信があれば遠隔授業が可能になるかもしれませんし、もっと学問にアクセスしやすくなるかもしれません。高等教育が整うことはアフリカの発展につながります。私がフランスで新しい価値観を発見したように、電気と通信が整うことで、アフリカの子どもたちの選択肢が増えれば良いと思います。


【(株)シュークルキューブジャポン】
https://www.sucrecube.co.jp/


【ツミキプロジェクト】

https://www.tumiqui.com/