欧州が学校だとしたらフランスはきっとズル休みするちょい怠け者のような生徒で、北欧はどちらかというと優等生のように思われるだろう。フランスでは社会課題が浮上する時になぜか必ず経済学者などがテレビで北ヨーロッパと比較してこのフランスはいかにダメなのかを語りやがる。人口も文化的な背景も国土も全部無視しながら、誰も確認しようがない情報ソース不明の統計を根拠に北欧はどれだけ真面目でどれほど経済を回しているのかをアピってくる。ウエストランド井口の言葉を借りていうと「うざい」。
 北ヨーロッパには行ったこともないのに、イケアの正社員かと思うほどに熱を込めて北欧デザインを語ったり木造の讃歌を歌ったりする奴も謎。フランス人、ちょっと北欧を美化しすぎではないか。少しでも歴史を勉強したらオシャレの国のイメージが揺れるはずだ。


 ヴァイキングが「ビュッフェ」の類語になる1000年前に竜頭の船を操りイギリスを侵攻したりした海賊の呼び名でもあったが、決して麦わら帽子を被りながら「海賊王になる」ようなお茶目な男たちではなかった。
 最近幸村誠先生の『ヴィンランド・サガ』という漫画がフランスで話題になっているが、その描かれているデーン人が現在のデンマーク人の祖先にあたる。優等生像とだいぶかけ離れているように感じる。たとえ登校していたとしても少年Aになり得る人材ばかりで、読み書きが得意どころか、図書館は丸ごと燃やすタイプだろう。
 ヴァイキングはかなり残酷で残忍な男たちだった。現在よく、北欧のどこかの首相が女性だとか、基本的にジェンダー平等だとかいちいち言われるが、1000年前の北欧ほど野蛮な国はあったかと聞きたくなる。そんな大昔ならどこの国でもわりと野蛮だったろうと突っ込まれると思うが、ウエストランド井口の別な言葉でいうと「正解!」。


Rémi BUQUET

翻訳家・通訳者
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