ノアゼットプレスのポッドキャストでも触れましたが、パリにはクリニャンクール、ヴァンヴなど蚤の市が4ヶ所あり、中でもモントルイユの蚤の市はかなり特異な存在かもしれません。20年以上前は古い物を売る出店が多かったのですが、最近はシャンプーや電球、服やスニーカーなど、購買層を低所得者(自分も)に絞った現行生活用品が売られ、古物業者は隅に追いやられています。とはいえ、ポルト・ドゥ・モントルイユ駅に近い入口付近では大量の古着が売られ、掘り出し物もあるので、僕としてはとても助かっています。


 写真は、モントルイユの蚤の市の中でも一番北側の半分ゴミとも言える物ばかりを売るバラックが連なる地区。秘境中の秘境です。たまにお宝に出くわすので全くもって侮れません。ある時この地区で、知っているフランス人女性を見かけました。彼女は、某オートクチュールブランドに在籍していた顧客担当者。僕の友人が服をオーダーする時に付いてくれて、とてもお世話になった方です。
 ただ、向こうは僕の顔を忘れているようだし、マスクのせいで全く気付いてくれません。かと言って、こちらから声を掛けるのも何となく憚られました。というのは、僕のように職業上古物を探しに来ているのならまだしも、この場所にいる時点で、もしかしたら彼女はお金に苦労しているかもしれないという可能性を捨て切れないからです。このように、そこで出会うとちょっと気まずくなってしまうのがモントルイユの蚤の市。微妙な場所ですが、宇宙的でカオスな環境に身をおくと様々なものが見えてきて興味深く、一見の価値はありかもしれません。ただし、女性一人で歩き回ることは厳しく、屈強な男性を伴っての訪問をおススメします~。


トモクン

●友くんのパリ蚤の市散歩 
http://tomos.exblog.jp

トモクンという名の45歳。在仏27年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。