ブルターニュ地方フィニステール県にあるアルゴレスコ社は、約10年前からワカメの養殖をスタート。2022年からは徳島県鳴門のワカメ加工業者うずしお食品とパートナーシップを締結、技術提携をして海藻を養殖しています。フランス人は海藻をどう食べているのか?! CEOであるティモテ・セラズさんにお話を伺いました。 (取材 編集部)

美しい海で育つ
ブルターニュ産の海藻に注⽬!


フランス人の食材としての海藻の反応は?


ブルターニュでは以前から海藻が使用されたコスメがあったり、農業用地に肥料として与えるなど海藻文化が根付いている地域でした。海藻を食材として食べ始めたのは、30年くらい前からです。現在のフランスでは、まだニッチな食材としての位置づけですね。今までのフランスでの加工方法があまり良くなかったので、海藻=おいしいというイメージではなかったんです。


海藻はどこで育てていますか?


今、私達が漁場として海藻を育てている海洋地は、ヨーロッパで最大の 350ヘクタールの広さがあり、EU の自然保護区ネットワークである「ナチュラ2000」に指定されている栄養豊富な漁場です。現在、私達の会社で扱うワカメは種付けから加工まで行っています。2018年にうずしお食品と出会い、日本の伝統技術を導入することで安定した高品質を保つ独自のノウハウを得ることができました。


養殖のもとになるワカメは元々フランスにあったのでしょうか?


いいえ。50年程前に日本から養殖の牡蠣がブルターニュ地方に輸入されたことがあったんですが、その時に牡蠣にワカメがついてきたのでは? という説があります。ワカメがブルターニュの海の環境に合っていたのでそのまま定着したのではないかと思います。


⽇本の加⼯技術で
おいしい海藻に!

他の国にも漁場はありますか?


今、ヨーロッパ全体で食用としての海藻利用が広がっています。海藻は体にもよく、風味や味もよい上に環境にもいいので、いいことだらけです!海のなかで育つ海藻は他に特別な栄養を与える必要もないし、その点でヨーロッパで注目の食材なんです。


ティモテさんが初めてワカメを食べた時、いかがでしたか?


いやあ、最初食べた時は正直あまり好きじゃなかった(笑)。でも日本の加工技術で作られたワカメはおいしくて好きになりました。

どんな食べ方をしますか?

いろいろ使いますが、サラダで食べたり、肉や魚と一緒に付け合わせにしたり、「ガトー・ブルトン」というブルターニュ地方のケーキがあるんですが、その中に甘くコンフィしたワカメを入れたものを現地のシェフが考案してくれました! フランスでは 50人のシェフに私達の海藻を使ってもらっていて、多くは星付きのレストランのシェフなんです。

今のおススメの商品はどれですか?

もちろんワカメもおススメですが、日本人が興味を持つのは、「アリコ・ドゥ・メール(Haricot de mer)」という海藻です。日本にはない海藻で、革新的な商品です。ブルターニュで自生している天然もので、塩蔵保存されています。色も食感もパーフェクトな仕上がりで、他の海藻と同じように栄養素も豊富でおいしいです。特にアリコの味噌汁はおススメ。
パッケージはフランス人アーティストであるオロール・ドゥ・ラ・モリヌリ(Aurore de la Morinerie)さんが、ブルターニュの風景を浮世絵のイメージでデザインしています。

今後、どんなふうに海藻を広めていきたいですか?

まずおいしい海藻を生産することですね。2つめはシェフたちに海藻がおいしくて可能性があるものだと見せていきたい。3番目は、ヨーロッパでの消費を増やすこと。そして、今年はパリ五輪ですが、たとえばフランスの柔道家たちにワカメを提供して、日本の柔道チームに勝ってほしいという気持ちはありますよ。これは冗談です!(笑)。

  • 日本ではシーコックトモエでアルゴレスコ社の海藻3種
    類を販売中。 HP https://seacook-tomoe.com/
  • アリコ・ドゥ・メール マグネシウムが豊富に含まれている
    海藻でヨーロッパでも注目され、どんな料理にも簡単に取
    り入れることができる。“Sea spaghetti”という通称も。
    スパゲッティのような形状の海藻