平和がいい。よっぽど変わらない限り誰だってそう思っているはず。軍需産業の投資家やビデオゲームの悪役以外は。流石に古代中国も平和だったら現在68巻出ている「キングダム」もリアルな話になってないのでアレだけど、基本的に平和はメリットが大きい。なぜかというとまず日常は普通にお出かけしたって酷い目に遭わなくて済むし、何より平時は平和じゃないことまで想像できる贅沢な余裕があるからだ。どう見ても平和は最高だ。

 しかしフランス在住の方はご存知だと思うけど、こちらのテレビドラマはなぜか殆ど刑事物。まるで皆は平和に不満を持ち事件に飢えているようだ。まぁ「相棒」と言ってるくせにその片方を容赦無くコロコロ変えながらシーズン21まで引っ張って放送する日本も近いだろう。仕方ないと言えば仕方ない。事件は皆の大好物。

 よく考えたら旧約聖書にだって例のアダムとイブの倅のカインは弟のアベルを殺す訳。ある意味、これは人類史初の兄弟同士の殺人事件。まぁ探偵役が神様だから流石に推理小説にしては設定がめちゃくちゃでこれもまた話にならない。実際19世紀までは犯罪などを犯す人がいたら西洋では個人の責任が問われるというよりその人が悪魔に取り憑かれたことにされていた傾向がある。一方、19世紀以降は「ちょ待てよ」と言われたかのように悪さをする犯人は根本的に他の人間と変わらないことを意識し始める背景に、新聞も普及されると共に推理小説が連載されミステリーブームを起こす。英国ではエルキュール・ポアロやシャーロック・ホームズ。ちょうど同じ頃の仏国ではアルセーヌ・ルパンやルールタビーユ。動機はそれぞれだが、大体優れた知能の持ち主でなかなかのカリスマ性に満ちるキャラ。現代日本では未だホームズの作者の名前と同じ「コナン」名探偵もルパンの孫である「ルパン三世」もまだまだ活躍中なのでこういう平和もやはり悪くないね。


『黄色い部屋の秘密』[新訳版]


ガストン・ルルー 著/
高野 優 監修・訳・竹若 理衣 訳
早川書房


Rémi BUQUET

翻訳家・通訳者
contact : buquetremi@negoto.fr