夏のバカンスを感じさせる南仏訛り。日本人である夫は6年間パリに住んでいたが、初めて南仏のフランス語を聞いた時外国人が喋っていると思っていたぐらいだ。南仏訛りはそのくらい癖が強い。スペインとの国境に近い町で生まれ育ったが、北仏出身の父とベルギー出身の母の家庭で生活していた私は、あえて南仏の訛りで話せるけど自然と出てくることがあまりない。

カルカソンヌ

 しかし訛っていなくても、その地域でしか使わない表現や言葉を知らずに使っていたというのを、パリに出てから実感した。大学のためパリに上京し一人暮らしを始めてから基本南仏出身だとバレることはなく、出身地を言うと「訛っていないね」と驚かれることがあったが、一回だけスーパーのレジで「南出身ですか?」といきなり聞かれたことがある。何で分かったの?と聞いたら、「レジ袋」のことを「poche」(「ポッシュ」、ポケットという意味も持つ)と言ったからだ。そこだったのか! 地方から来ると田舎者扱いされることがあるけど、長くパリで生活していても地方出身であることを誇りに思うフランス人も多いと思う。

南仏の城の遺跡


実家で暮らしていた時、町の人の多くが訛っていたけど、今でも記憶に残っているエピソードがある。小学校の頃クラスの前で文章を読んでいた時、みんなからある言葉の発音にびっくりされてショックを受けたことがある。私の発音が「標準」のフランス語だったのに、クラスメートも先生も訛っている発音をしていたから自分だけ注目を浴びてしまって、何か変なことを言ったみたいに逆に恥ずかしかった。訛っているから馬鹿にされることはよくある話だけど、逆に「標準」の発音で話して恥をかくのは予想外だった。


リラ

東京で翻訳者としても活躍する29歳のフランス人女子。持続可能な社会の実現に向けての活動もする。趣味は編み物とベランダの植物の世話