今、フランスで日本関連のイベントに行くと、大きな出店スペースで、多くのフランス人を集客している日本の古物を扱ったブロカンターがいます。Hamaya Franceの福島さんです。その福島さんに日本の古物と福島さんご自身について聞いてみました。

福島 康司 さん


 古いこけしや、日本人形、古い着物、タンス、ランドセルなどです。これら日本ではあまり価値の付かないようなものが、フランスで売れるのかと手探り状態で始めたのですが、2018年にフランスで会社を立ち上げてから約4年、市場も開拓できてきて、ようやく軌道に乗りました。

自転車選手から
古物の世界へ

まず福島さんとフランスとの関わりを教えて下さい。


 プロの自転車選手をしており、ツール・ド・フランスに憧れて1999年にフランスに来ました。兄もプロの自転車選手だったのですが、その兄の背中を見て、私もプロの自転車選手になりました。ツール・ド・フランスを、まだ誰も成し遂げたことがない日本人チームで走れるようになりたいというプロジェクトの、チームのメンバーとして活動していました。


なぜ古物の世界に?


 現役を終えて次のキャリアを考えた時です。しばらくはコーチの仕事など自転車にこだわっていたのですが、フランスに関連した転職先を探している際にリサイクル・リユース事業などを行う株式会社浜屋と出会い就職しました。同社は日本国内で不要となった品々を、アジア、アフリカ、中東など年間約2000本のコンテナで輸出している会社で、同社がフランスで事業を立ち上げる際に手伝うことになりました。


どんなものを売っていますか?

商品陳列を見ていると、北海道土産の大きな木彫りの熊など、日本だと値が付きにくいものも多いですよね。


 昔おばあちゃんの家で見たことがあるようなものが多いですね。私も子どもの頃は、こういうものが「怖いな」と思っていたのですが、フランスでは使った人の思い出がある物というのはとても人気があります。取手の金具が欠けた完品ではない古いタンスであっても、戦時中はこうした金属まで回収されたんだという、その品物の背景にある物語が好まれます。

必死に働いて自転車の日本チームを

日本だと不要と思われるものに価値を見出す売り方は、フランスが最初ですか?


 いえ、すでに弊社の社長がイギリスで市場を開拓しており、そこで実際に学ばせてもらってからフランス市場に取り組みました。


2018年だとコロナ禍とかぶっていますね。


 そうですね。出店できるイベントなども中止になり、とても大変でした。フランスでの法人設立から、コロナ禍が本格化するまで半年間くらい活動期間があったんですけど、活動を始めるのがもう半年後だったら事業自体がアウトでしたね。支えてくれたスタッフのお蔭で乗り越えられました。


この仕事をしていて嬉しい点は?


 日本では捨てられてしまう運命にあったものが、フランスに来て大切にリレーされ、日本のことが大好きだというお客さまの元に渡る、購入された人々の笑顔が見えるという点では、とてもやりがいがあります。


今後、固定した店舗なども持ったりするのでしょうか?


 私たちの目標としては、ヴィラージュ(村)という形で、日本の古物のテーマパークのような店舗を持てたら良いです。広さはディズニーランドの規模を超えたいですね(笑)。不要となったそろばんや書道セットなど、それらを使って日本のお稽古事を広めていくこともできたらと思います。


元自転車選手としてはどうですか?


 これは個人的な夢なのですが、ツール・ド・フランスで優勝できるような、日本人の若手選手を育てられるようなサポートをしていきたいと思っています。そういうチームを作って、それを経済的に支援できればと思っています。


何年後に叶いそうですか?


 ヴィラージュは3年後くらい。自転車チームは、あと10年くらいは思う存分に働いて、その後かなと思っています。

【HP】 https://www.instagram.com/koji.japon/

(文 守隨亨延)