パリは燃えているか。テレビを見るとこの戦後の傑作の題名はもはや愚問のように聞こえてくる。どこを見ても炎だらけで国の施設が次々に燃やされる中、暴徒の叫び声や機動隊の命令が永遠に交差されていく。今夜も結局また暴動か。この新世紀を迎えてから何回目になるのだろうか。両手で数えきれないような気がしなくもない。


 貧しさを盾にナイキの店を容赦なく破壊したり国が差別するというふざけた理由で窃盗を正当化させたりする輩は素顔で堂々と暴れているから逮捕されるのもきっと時間の問題だ。能ある鷹は爪を隠すと言うけど、逆に脳のない野郎は罪すら隠さないらしい。


「昔の方が良かった」と嘆く年配の方がどんどん多くなっているが、それは決して最新型のスマホを使いこなせてないからではないし、宇多田の新曲にがっかりして言っている訳でもない。過去も戦争がレアなことではなかったし、おっかない事件は腐るほどあったはず。金魚の記憶力は僅か数秒だけだという話は有名だが、幸いなことに結局我らも時間が経てば酷いことまで忘れたりするもんだ。そのおかげで陣内智則のようなお笑い芸人がいくらスベってもまだまだ売れる訳。
 しかし暴動の報道を見ると暴徒も相当の暇人だなとしか言いようがない。新しい「ファイナルファンタジー」や「ゼルダ」の続編が出ているのによく夜遅くまで徘徊してられるなと。もうすでにクリアしているのかな? 逆に難易度高すぎてイライラしてるパターンもあり得るか。
 数週間前にマクロン大統領は「非文明化」という単語を使って話題になったけど、暴動に参加する人の言動からすると確かに文明的な要素を感じ取れない。どちらかというとこの暴動は「野蛮」に近い行動だ。あれだけ建物が燃えているのに暗黒時代がまた到来かと思うと皮肉のようなもんだが、火炎瓶持ったやつに流石に火は貸したくないもんだ。


Rémi BUQUET

翻訳家・通訳者
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