パリの中心オペラ大通り。オスマンの完成させた代表的な近代パリの街並み。手前の広場から奥にはオペラガルニエへ真っ直ぐのびる通り。そしてそれを横切るように地面を走る冬の陽光の帯が印象的です。19世紀後半のパリの冬の風景。冬の空気感と光そして通りを行き交う人々や馬車の活気も伝わってくるようです。

この光景は、モネと並ぶ印象派の巨匠、カミーユ・ピサロの作品です。ピサロは印象派を牽引し、その中でも田園の風景画家として有名でした。しかし、66歳の時、都市シリーズの制作に着手します。当時のパリの喧騒を伝えようと高い場所を探したそうで、実際、息子ルシアンへ宛てた手紙にこう書いてあるそうです。「ホテル・デュ・ルーブルでオペラ通りの素晴らしい景色を望む部屋を見つけました」 そこからの景色は、テアトル・フランセ広場とオペラ大通りとして連作で10枚描かれました 。今回紹介しているのはその中の一つ、「Soleil, matinée d’hiver(陽光、冬の朝)」という作品です。

モネと同じ印象派といってもこちらは写実的な描写で捉え、都市のつかの間の瞬間をピサロの詩的な感覚で繊細に仕上げています。ピサロの滞在したホテルは、今もコメディフランセーズの隣接する広場にあります。Hotel du Louvre という名のホテルで、滞在した部屋は、ピサロスイートとして残っており、当時彼の見た景色を体感できるみたいです。泊まってみたいですね!


妹尾優子

仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「 Lecture de l’après-midi 」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
https://note.com/tabichajikan/m/md750819c9bc7