うっすらと青空を残した薄曇りの午後。わずかに差し込む冬の陽光に照らされた雪は質感まで伝わるほどです。通りを行き交う人々もまばらで、雪の中に残った馬車か荷車の車輪の跡が印象的。全体的にブルーとグレーでまとめられ落ち着いた雪の午後を演出しています。


パリの北西10キロのところにある街アルジャントゥイユ。セーヌ河畔のこの街はパリから近く、19世紀後半には行楽地あるいは避暑地としてブルジョワジーや芸術家に愛されました。モネも数年家族とともに住み、彼を訪ねて、マネやルノアールも来たそうです。また、モネを語る上でこの街は重要です。小さな船を購入してアトリエにし、アトリエ船と名付け、セーヌ川に浮かべ漂いながら、水のきらめきや様々な表情、水上からしか見えないセーヌ河畔の景色などを描きました。
そういえば、モネは生涯一貫してセーヌ川流域に住んでいます。印象派としてのモネの基盤を確立したのはこの時期とも言えるでしょう。印象派という言葉の由来になった、「印象 日の出」 を描いたのもこの地に住んでいる頃でした(描いた場所はル・アーブル)。そしてここで、雪の作品も18枚残しています。この作品はその中の一つで、描かれているのは、モネの住んでいたサンドニ大通り。パリとアルジャントウィユとを結ぶ鉄道の駅に繋がる道です。上野の国立西洋美術館にも、モネの雪の作品「雪のアルジャントゥイユ」 が収蔵されています。2024年2月12日まで展示予定とのことですので見られるチャンスですね。


妹尾優子

仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「 Lecture de l’après-midi 」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
https://note.com/tabichajikan/m/md750819c9bc7