広告が街並みのアクセントに?パリの経済事情と景観
中心地については、多くが19世紀以前の建築物で構成されているパリ。景観を守るための法律があり、建物の内側は改装できますが、通りに面する部分は取り壊せません。ということで、古い絵葉書や映画と比較しても街並みに大きな変化がなく、常に同じ姿。それはそれで良いのですが、大胆な発想による建造物が作れず、フランスでは建築自体が発展しなかったと主張する人もいます。地方都市の美術館など大きな箱はフランス人以外の建築家の作品が多いのを考えると、そんな側面もあるのかもしれません。
そんな中ここ数年、パリの街並みに変化がみられてきました。大きな建築物の改装時には足場を隠すため防水シートを使いますが、例えばルイ・ヴィトンのブティックやサマリテーヌなどは、各々のブランド性をアピールする意匠を防水シートにプリントします。しかしルーヴル美術館やコンコルド広場にある文化財センターでは、建物に関係ないファッションや携帯などの商業広告が貼られるようになったのです。文化財センターでは、1,000平米以上の壮大な防水シート広告が年間で10億円単位の広告費を稼いだそう。つまり改装費が賄えるのです。
写真はサン・ラザール駅近くのトリニテ教会。現在改装中で、某ファッションブランドの広告が張り巡らされています。親会社は、アメリカの某巨大コングロマリット。この規模の広告には元手が必要ですから、大手でないと難しいのでしょう。そうやって経済は回っていくのだろうけれど、景観を守る姿勢とは相反し、引っ掛かるものがあります。そして、何となくカネカネしていて後味が悪い。でも、これも時代の流れ、受け入れていくほかはないのでしょう。この種の広告を見る度に、全くもってスッキリしないのでした。
トモクン
トモクンという名の45歳。在仏27年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。
●友くんのパリ蚤の市散歩
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