狂気の果てに救いのサンタがいる

 マスメディアは第6波が来るか来ないかで盛り上がっている中、フランス人は少しずつ通常通りの生活を取り戻しつつ、しつこいウィルスよりずっと高めの可能性でやってくるはずのクリスマスに向けて準備を始めている。

 子どもは郵送されるおもちゃ屋さんのカタログを切ったりしてプレゼントリストを作る一方、大人たちはノエルのメニューやワインのペアリングで知恵を絞り、皆それなりに悩んでる。まぁ疫病と比べれば可愛いものか。

 10月末ならハロウィンだろとつっこまれそうだが、ここ2年マスクの着用が義務付けられてきたフランス人はさらに仮面を被りたくないだろうし、意外とゾンビ映画よりリアルは相当怖いというのを思い知らされたから、たとえ飴を大量にもらっても死人の仮装をする気にならないのも無理はない。

 はっきり言って凱旋門が妙な布に包まれてること以外はほぼ普通な状況なので、しばらく会えなかった親戚に普通に会って普通に楽しい時間を過ごしたい。政治家のダメさとか何より「普通」がそんなに悪くないかもということをこのコロナが教えてくれたと思う。年末は家族で揃ってミカンにコタツという概念はこちらにはないが、どちらかというとフランス人も毎年、食卓に囲んで(エスカルゴを食い漁った後)ミカンの皮を剥きながらダラダラと話す。今年もクリスマスディナーはおそらくどこの家庭でもあのウィルスの話で盛り上がるだろう。ただ去年と違って今回は我らを狂わせてしまったこのコロナを完全にネタにして皆で「普通に」笑うことができたら嬉しい限り。日がどんどん短くなる秋だが、何よりまた陽が昇るのを知ってることこそが人類の力なり。


「我らを狂わせたウイルス」(2021年)

作者 ベルナール=アンリ・レヴィ

和訳 未定


Rémi BUQUET

フリーランス翻訳家

buquetremi@negoto.fr