期待を膨らませる冬至

 いよいよ2021年もとうとうと暮れてしまう。結局コロナとの闘いの終わりがいまだに見えず日本は再び鎖国化していく一方、フランスも国民の鬱憤が溜まるのみ。本来一年で一番楽しい時期なのに世界各国に漂う空気がかなり重い。近所のスーパーで雇われるサンタすらなかなか微笑まぬが、それは決して低給のせいでも自己診断でEDだとわかったからではない。

 毎日のニュースが皆のやる気をなくすし、言い連ねられている専門用語もちんぷんかんぷんでうざったい。反ワクチン運動もいればロックダウンするよう呼びかける 警戒心の強い医師たちもいるからなかなか正解が出てこない超長いクイズ番組をずっと見せられる気分。コロナがドラマだったら続編だけは絶対にいらないと思うし最終回もきっと誰もが早送りで見るだろう。

 いずれは全てを振り返って笑えるのは確かだが、このソーシャル・ディスタンシングが求められる中、一番損してるのは働いていない高齢者と若者だと思う。前者は孫、後者は異性と接することさえ禁止されてるから。まぁどちらかというと出会い系サイトユーザーの方が文字通り一番損してるに間違いないけど。しかも何よりこの先が暗い。コロナ以前にフランスでも「格差社会」がキーワードだったのに対し、今後は「社会分裂」に向かうのではないかと懸念されるほど対立が繰り返される。来年は大統領選だからピリピリしてるのも無理はない。

 ロマン・ガリーが戦中に著した『白い嘘』で大戦がまるでヨーロッパへの試練のようなものだと書いてある。それを乗り越えたら戦争が永遠に消えるから期待を持つしかないと作者が呼びかけてるけど、真夜中の最も暗い時こそまた陽が必ず昇ってくるを信じることが人間らしいのではいかと思う。冬至、この世を覆う闇がそのうち晴れ、凹んでた近所のサンタも元気いっぱいで立ち上がるだろう。期待を持てばなんとかなる。とはいえ年末年始にやけ酒も決して悪くないはず。


作者 ロマン・ガリー

作品『白い嘘』

出版社 読売新聞社


Rémi BUQUET

フリーランス翻訳家

buquetremi@negoto.fr