閉店報告。
今月の一冊
「雲海の上の旅人」
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
人生は出会いもあれば別れもあります(少なくとも監禁罪を犯さない限り)。
5年前に始めたこのコーナーをいよいよ畳む時がきたが、振り返ると『フランス人は10着しか服を持たない』の紹介で始めたのに、畳むために5年間がかかるなんて皮肉なものだ。毎月こういうフレンチジョークやしょうもない駄洒落ばかりの原稿を優しく受け入れてくれた担当者に感謝の気持ちしかないです。
5年の間、本をおよそ60冊以上に推薦してきましたが、この活字離れの時代に一体どれほど役に立てるのかがはっきり言ってわからない。記事一つで破綻寸前の出版業界を救えるとは流石に思ってないが、自分の記事で誰かが時間を惜しまずに手間を惜しまずに本屋まで足を運ぼうと思ってくれていたら…アマゾンのワンクリックで買えるぞと揶揄したかったです。
それは嘘。たとえ近所の本屋の店員さんの「なんでも読んできました」ような、妙にイラっとする態度が気に食わなくても、最新型AIと対話する奴が増えてるこんな世の中こそ、ああいうプロに相談して本を買うことが大事だろう。所詮「他人の批評しか読んできてない」チャットGPTの味気ない文章に目を細めることより店員の人間味のある話に耳を傾けること。日本にまだ素敵な本屋がたくさんあるのでずっとそのままであって欲しいなぁ。
と、下ろされた暖簾を洗うときにふと思いました。お世話になりました。