フランスの期待を一身に背負う新星クチュリエシャルル・ドゥ・ヴィルモラン

シャルル・ドゥ・ヴィルモラン

クチュール組合のモード学校を経て、ファッションに特化した高等教育機関であるIFMを卒業したばかりのシャルル・ドゥ・ヴィルモランという弱冠23歳の青年が、2020年にオートクチュールコレクションで華々しくデビューしました。華々しくなったのは、彼の色鮮やかな作風のせいもありましたし、憂いのある表情をした美少年だったことも大きく影響したことでしょう。でも、何よりもドゥ・ヴィルモランという名字がフランス人の琴線に触れることとなり、ファッション業界のみならず、仏メディア全体が注目をしたのでした。

 シャルル・ドゥ・ヴィルモランは、著述家で社交家のルイーズ・ドゥ・ヴィルモランを大叔母に持ち、1970年代に権利を売ったため、すでに関係性はありませんが、パリ1区のセーヌ川沿いにある園芸店『ヴィルモラン』を経営していた家族の一員でもあります。ルイーズ・ドゥ・ヴィルモランというと、あのアントワーヌ・ドゥ・サン・テグジュペリやオーソン・ウェルズ、そして作家で文化相のアンドレ・マルローまでもが虜となった程の美貌を誇り、ジャン・コクトーが絶賛する程の文学的才能の持ち主でした

 そんなバックボーンのある青年がオートクチュールコレクションを発表するとなったら、皆応援しないわけはない。今年6月に発表されたコレクションには、ジバンシィ一族の女性や往年のスーパーモデルが出演し、フィナーレではマリ=アニエス・ジロがダンスを披露しました。

 そんな彼なので、お声が掛からない訳がないですね。翌月に行われたオリンピックの開会式。園芸店『ヴィルモラン』から程近いパリ最古の橋、ポンヌフで披露されたダンス・カンパニー『グラット・シエル』によるパフォーマンスでのダンサーたちの衣装を手掛けました。その数150名以上。まぁ、カラフルなのは良いのだけれど、やや過剰であり、ちょっとばかり垢抜けなさが漂っていましたが。これが吉と出るか凶と出るかはわからないけれど、とりあえず名刺代わりにはなったはず。微力ながら、応援したいと思います。

トモクン


トモクンという名の45歳。在仏27年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。