古典と書いてルーツと読む。
文系の勉強をする者は二種類に分けられると思う。先生などに薦められた本だけ真面目に読んでいく者と、活字好きすぎてとにかく手に入る本を無差別に読み漁ろうとする者。どちらかというとどっちも優等生だが、前者は確実に「コスパの良い」勉強法で最も効率よく受験に臨む一方、後者は趣味も視界も広くなった分だけ無駄に視力を落とすと言えなくもない。最終的にはChatGPTに脅かされるからこの暗い先に雇用はともかく視力はキープした方が賢明かも。
友人のおすすめや先生の一押しは参考にしても損はしないはず(少なくともマルチ商法の場合以外は)。ただやはり自分でお店まで足を運び、自ら選んだ作品は特別。ジャケ買いでも構わないし、自分の好みをある程度把握するようまずは自分の手で取って挑戦していくこと自体が大事。そうやって店員さんの視線を恐れず、周囲にも左右されず自分はどういうのが好きなのかわかるようになるはず。まぁこうやって書くと本か服かAVの話してるのかわからなくなるが。
とりあえず真の「本の虫」ならきっと現代の作品だけで満足せず、昔はどういう物語が好まれたのかという興味を持っているはず。最古の書籍になると聖書は連想されがちだけどそれ以前に西洋文学だとトロイの木馬などで知られるホメロスの作品もあれば古代メソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」もある。ただし仏文学だけ絞っていくと最初に出てくるのは「宮廷文学」の作品かな。あまり知られてないあれは中世時代の騎士達のデーティングマニュアルに過ぎない。正義感に駆られ悪党を倒して姫を助けることは当時の男達の理想であり40年前のファミコン世代の坊やたちの日常でもあった。「書籍」という形に拘らずさらに古い物語を追い求めたらドルドーニュ県にあるラスコー洞窟の壁画は無視できない。「先史時代のベルサイユ」と言われるほど逆に歴史的に重要な場所。まだまだ解明されないことが多いけど、クロマニヨン人に描かれた狩猟シーンは合間に「これ以上何も欲しがるな」とは書いてあれば最高におもろいなとふと思ってしまう。
『ぼくは古典を読み続ける』
出口 治明 著
光文社
Rémi BUQUET
翻訳家・通訳者
contact : buquetremi@negoto.fr