小さな助け合い
パリの人は冷たくて無愛想とよく言われる。一方で公共の場で後ろの人のためにドアを押さえたり、階段が多いパリのメトロで荷物を運ぶのを自然と手伝ったり、電車で席を譲ったり、誰かが転んだ時に助けてあげたりすることがよくある。夫がパリに住んでいた時にそういった習慣を身に付け、日本に帰ってもやり続けている。
日本人はとても優しいという評判があって実際にも優しいのに、電車の中で席を譲ったり、ドアを開けてあげたりしないことに最初驚いてギャップを感じた。道を尋ねられた時わざわざ目的地まで案内することがあるのに、ドアは押さえないのだ。もちろん席を譲る人はいるけど、お年寄りが他のお年寄りのために譲ることもよく見る。目に見えない事情もあるかもしれないが、座っていた若いサラリーマンの目の前に妊婦のマークをつけて明らかにお腹も大きかった女性がいたけどその人も周りの人も席を譲らなかったのを見て印象に残った。
他人との関わりを極力避ける、逆ギレされるなど結果を恐れている、注目を浴びたくない、理由は人によって様々ある。自分も長年東京に住んで気づけばその文化に染まりつつある。他の人もやっていないからと、声をかけるのが恥ずかしいからと、おせっかいかもしれないからと困っていそうな人を手伝ってあげるのをためらう状況もある。でも結果的に手伝って欲しくないという人より、手伝ってくれて助かるという人の方が多いと思う。きっと自分が困っていたら誰かに手伝ってくれると嬉しいと思うし、小さい助け合いや配慮が社会に大きな好影響を及ぼすはずだ。
リラ
東京で翻訳者としても活躍する30歳のフランス人女子。持続可能な社会の実現に向けての活動もする。趣味は編み物とベランダの植物の世話。