美術史を作った男 ミケランジェロ崇拝者!?

今月のアート

受胎告知

ジョルジョ・ヴァザーリ

ルーヴル美術館

受胎告知。マリアの前に大天使ガブリエルが舞い降り、処女である聖母マリアがイエス・キリストを宿していることを伝えています。ガブリエルが現れた時、マリアは読書中だったため、片手に本を持っています。ガブリエルは、キリスト教において、ミカエル、ラファエルと共に三大天使の一人。神の声を伝えるメッセンジャーの役割を担っています。空から舞い降りたということを表す雲も描かれています。手にはマリアの純潔を示す白百合を持っているのも特徴です。この主題は、キリスト教において重要な一場面で、初期のキリスト教美術から多くの画家によって描かれてきました。

 今回紹介するのは、ルネサンスを代表するジョルジョ・ヴァザーリ。イタリア、トスカーナ州出身でフィレンツェのメディチ家トスカーナ大公のお抱え画家。また、建築家としてウッフィツィ美術館の設計も行うなど多才でした。ヴァザーリは、ミケランジェロの弟子でもあり、彼のことをとても崇拝していました。

 彼の名を一躍有名にしたのは、芸術家の評伝をまとめた『画家・彫刻家・建築家列伝』。歴史上初めて学術的に美術史を確立。これは、今我々の認識する美術史の捉え方の基本となっています。

 ただフィレンツェそしてミケランジェロ至上主義のため、主観と偏見も否めず、その後も編集や研究も続いているそうです。ミケランジェロを偉大な名付けられた、自然表現からかけ離れ誇張されたダイナミックな表現に傾倒していました。それを踏まえてこの絵を見ると、どことなく筋肉質でしっかりした人物像に見えてきます。芸術家に仕立てたのは、ヴァザーリのこの本によるところが大きいかもしれません。ヴァザーリは、ミケランジェロの「マニエリスム」と名付けられた、自然表現からかけ離れ誇張されたダイナミックな表現に傾倒していました。それを踏まえてこの絵を見ると、どことなく筋肉質でしっかりした人物像に見えてきます。

妹尾優子


仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「Lecture de l’aprèsmidi」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。