6月のメンズのパリコレクション最優秀演出賞は独断でメゾンミハラヤスヒロに決定!
1990~2000年代のパリコレは、各ブランドが趣向を凝らした演出でショーを見せ、その出来栄えを競っていました。服よりも会場やセットの豪華さに重きを置くという極端な時代が続き、それはそれで本来の目的から逸れてしまい、悪しき傾向だったと思います。21世紀になってからは落ち着き、壮大なショーが少なくなっている昨今。そんな中で、ちょっとしたアイデアや工夫次第でこんなにも面白くなるのか、と感動したのが、今回ご紹介する三原康弘によるメゾンミハラヤスヒロのショーでした。
会場は歴史的建造物にも指定される円形の劇場、サル・ワグラム。不穏なBGMが流れる中、正面からモデルが登場。すると、突然モニターに「Bill Withers - Lovely Day」のタイトル、そして歌詞が表示され、曲が流れ始めました。ただ、ビル・ウィザースにしてはどうにも歌が下手。不思議に思いながら斜め前を見たら、大学生風の青年がマイクを片手に歌っていたのでした。ということで、ショーのBGMは全編カラオケ。招待客は戸惑いながらも、続いて懐メロを歌い上げたオジサマ2名にはそれぞれに拍手を送り、会場は大いに盛り上がりました。フィナーレはザ・モンキーズを歌う酔っ払い。喝采となり、期せずして胸がジ~ン。
カラオケシンガーズにばかり目が行きがちでしたが、肝心の服も奇想天外で面白いアイテムばかり。バックがオープンになっているトレンチや、シャツが背中にアップリケされているGジャンなど、全方位から楽しめました。ストリート色を強めるバレンシアガのシュールな方向性とはまた違い、もう少しウェアラブルなアイテムが多く、そういった意味で東京らしさを感じさせます。長年パリコレを見ていると、驚いたり感動したりすることが少なくなってきているのだけれど、こんなに楽しいショーが成立するのだから、パリコレにもまだまだ可能性があるのかも、と光を見た気がしたのでした~。
トモクン
トモクンという名の45歳。在仏27年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。
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