■パリジャン突撃インタビュー■
外出制限で人気が集まった仏のデリバリーとは?
今年3月末からフランスでは3回目の全国的な外出制限が敷かれています。最初の外出制限時は人々の間に多くの不安がありましたが、今では慣れたもの。制限の強さも以前より緩やかになっています。これらの制限を通してフランス社会にはどのような変化が現れたのでしょうか。パリ在住ジャーナリストの守隨亨延さんにレポートしてもらいました。
(文 守隨亨延)
人気持ち帰りメニューの3位は日本食
フランスでは新型コロナ対策のため、年間を通してほとんどの期間でレストランの営業がテイクアウト、または配送のみに限られる状態が続いています。そのため各店は、この1年を通して持ち帰りメニューに様々な趣向を凝らすようになりました。大衆向けのお店だけでなく、ミシュランの星が付くようなレストランも家で楽しめる本格的なデリバリーメニューを展開しています。実際どのような料理がパリっ子に人気なのでしょうか。
米調査会社NPDグループによると、2020年のフランスにおけるデリバリートップ5は、上から順にピザ、ハンバーガー、日本食、インド料理、チキン(フライドチキンなど)。ピザに関しては2018年、2019年から人気が揺るがず、ともに1位でした。コロナ禍以前から拡大を続けてきたハンバーガーは、2020年のデリバリー人気では2位に食い込む成長を見せました。(2018年と2019年はどちらも3位)。そして前年2位の地位を明け渡したのが日本食です。
具体的にはどのような日本食がパリで売られているのでしょうか。Uber Eatsを眺めていると、以前から定番だった寿司に加えて、近年パリでも浸透してきているお弁当(Bento)、そしてラーメンを散見できます。ラーメンの場合、デリバリー方法は大きく分けて3通り。すでに茹でられた麺で配送する方式と麺だけ家で茹でる方式、そして他の具材を含めて家で温める方式です。こだわりのあるラーメン専門店の場合だと、特に後者2つの方式を用いている場合が多いです。
人気のストリーミング配信はNetflix
日本同様にフランスでも、巣篭もり需要の恩恵をストリーミング配信会社が受けました。フランス国立映画映像センターによれば、フランス人が契約するストリーミングサービスは、2021年1月時点で上位からNetflix(51.5%)、Amazonプライム・ビデオ(27.9%)、ディズニープラス(20%)の順。Netflixが圧倒的に人気です。
日本の場合、同じくNetflixは契約者のシェアでは1位ですが、割合は19.5%。続いてAmazonプライム・ビデオ(12.6%)、U-NEXT(11.1%)となっています(GEM Partners株式会社:2020年定額制動画配信サービス別市場シェア推移)。そのためフランスは、日本以上にNetflixを好んで契約する人が多い国ということになります。
巣篭もり需要はストリーミング配信サービス以外にも波及しています。パリ市内の玩具店に聞いた話では、外出制限でアニメやドラマなどを見る機会が増えたため、それに伴った関連商品を、制限明けに買い求める人が増えたそうです。
コロナ禍になって1年以上が過ぎました。ワクチンなど明るい兆しは見えていますが、しばらくはこの状態が続きそうです。コロナ禍をきっかけに自粛となったフランス特有の頬と頬を合わせる挨拶、ビズがコロナ後は無くなるかもしれないという話もあるように、今回の世界的なウィルス騒動は、フランスでも世の中の流れを大きく変えています。
守随 亨延
ジャーナリスト。ロンドンで大学院卒業後、東京で雑誌記者として活動し、渡仏。『地球の歩き方』フランス/パリ特派員。 株式会社プレスイグレック https://presseigrek.com/