日仏の元会計士夫妻が営む 今パリで人気の和食レストラン

【今月のお客さま】

カカス・アルボンさん&みよさん

パリっ子にとって、すでに定番の選択肢となった日本食。パリ市内では様々な価格帯と種類の日本食がありますが、特に注目されているのは、「いかにリアルな日本を体験できるか」。市内12区にあるレストラン「じんちゃん食堂」もその一つです。同店を営むカカス・アルボンさんとみよさんご夫妻に聞きました。

(文 守隨亨延)

仏人には「意外」な日本の居酒屋文化

まずお店のことについて教えてください。

み:2019年に開業し「美味しい」「たっぷり」「気軽さ」「楽しさ」をテーマに営んでいます。食事やデザートは全て自家製ですし、ソース類もほとんど店内で作っています。

ア:日本と同じ味を食べられることはもちろん、満足できる量と値段、週7日休みなしの営業にもこだわっています。思い立った時に一人でも来店できる気軽さ、またカジュアルで楽しく時間を過ごせる、日本の居酒屋の雰囲気を再現しています。

お二人は前職が会計士だったとか。

み:そうなんです。私は公認会計士としてPWCという監査法人に勤めていました。夫はEYグループという会計事務所でした。私が日本法人からフランス法人に出向していた2年の間に夫と出会いました。

ア:妻が日本へ帰国するタイミングで私も日本に行きました。来日後はアルマーニの日本法人で経営管理の仕事をしていました。

どうしてまた飲食を?

ア:日仏どちらの国も好きなので、それなら両国の理解をもっと深められることをしたいと思って。その手段として二人が好きだった飲食を選んだんです。

み:夫の親族が来日した際に、日本の印象を聞いたら「意外だ」と言ったんです。彼らの中で、日本はきっちりした国というイメージがあったようなのですが、居酒屋などを訪れるとみんな酔って楽しそうにしているし、お店の人もカジュアルに話しかけてくれる。それが意外だったようです。夫という日本国外の人間を通して見たときに、日本の居酒屋文化は伝えるべき素晴らしい文化だとより感じました。

追加ソースを頼むフランス人

飲食経営でどんな苦労がありますか?

ア:私たちは料理人の経験がありません。そのため経営者として大極的にビジネスを行うことに専念しています。その中で特に大変だったのが人でした。現場のことをしっかり仕切ってくれる責任者と出会うのはなかなか難しいです。

み:フランスにいる日本人料理人は、フランス料理をやりたい人がほとんどです。日本食を広めるためにパリで日本食やりたいという人はほとんどいない。私たちは現場に入れないですから、最適な人を見つけ出し信頼関係も築いていくのは大変でした。

物件探しはどうですか?

み:予想しなかったことが起こりますね(笑)。私たちが買った物件も購入してみたら法律違反の箇所が色々と見つかりました。排水溝のつくりなどです。法律には抜け道もありまして、その様子が分かる状況でした。それらを直す工事費がかさみましたね。

ア:フランスでは工事に建物の組合の許可が必要です。許可にも時間がかかりました。工事を決めてから終わったのが1年半後。弁護士を立てたりして対応しました。

開店後にフランスの味覚については気づいた点は?

み:フランス人のお客さまはソースが好きですね。日本人よりかける傾向があります。結構ソースがかかっていると感じる場合でも追加ソースの注文をされるので、しっかりした味付けが好きなのだと感じます。ナス田楽やナス揚げ浸しは人気がありますよ。

ア:Uber Eatsでもエクストラソースの注文は多いです。

今後の展開は?

み:1号店の土台がようやくできたかなと思うので、これを機に次のお店を出すことができればと思います。

ア:Eショップを充実させています。お米などの食材や食器など、お店で使っているものは日本から独自に直接仕入れているのですが、それらをEショップでも販売していきたいです。日本の生産者とフランスの消費者を繋ぎ、双方に喜んでもらえると嬉しいです。


【じんちゃん食堂】

https://www.instagram.com/jinchanshokudo