セレブと富裕層が一極集中する目の保養という意味でのパリコレクション

パリコレクションの時期になると、普段の観光大国らしい賑わいに、煌びやかさ、華やかさが加わります。セレブリティと富裕層が大集合し、会場から会場へ大移動。皆、何かを追い求めているのだけれど、それが何なのかわからないまま会期を終える感じ。でも、ファッションは一過性のものであり、そんな感じでちょうど良いのかもしれません。ジャーナリストの皆さんは「パリは特別。ミラノともロンドンともニューヨークとも違う」と、パリがいかに偉大であるかを説きます。創造性・独自性に重きをおく街から生み出されるパリコレクション。モードの中心地として不動の地位を築いているわけです。
 醜悪ギリギリの物や上品な物、一見粗雑な物や繊細な物。あらゆる感性がパリコレ会期中に一緒くたになって飛び出してくるため、受け止める方も必死。でも、どれを取ってもお金と時間と労力が掛かっていて、スペシャルな物に仕上げられています。目の保養になるケースは多いかもしれません。
 さて、こちらの写真。見ての通り、シャネルのバッグです。3月に行われたショーの会場にて、顧客の方が身に着けていたものを撮影させていただきました。2023年にモナコで発表されたリゾートコレクションの中の1点で、スロットマシーンをモチーフにしています。今にも動きそうで、やはりシャネルならではの繊細な技巧に裏打ちされたファンタジーがあり、良く出来ているなぁと感心するばかり。市場でどれくらいのお値段で取
引されているのか気になり、ネットで調べてみたところ、200万円以下のものは全く見当たりません。販売されてからたった2年でオークションに掛けられる程のアイテムになっています。ファッション系の高級品の売買は、株よりも安全で確実? 
 パリコレクションに登場するようなアイテムはあまりにも高額なため、我が物にすることはなかなか叶いません。目から入ってくる贅沢な情報を咀嚼しながら、指をくわえて眺めるほかはない。うら寂しい気分になりますけれどね。

トモクン


トモクンという名の45歳。在仏27年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。