光と静寂を求めて ジヴェルニーのモネの家

今月のアート
Maison et jardins de Claude-Monet
モネの家と庭園
ジヴェルニー
光と静寂を求めて ジヴェルニーのモネの家
ノルマンディ地方の小さな村、ジヴェルニー。
パリから電車で約1時間の場所にあるモネの家と庭園(Maison et jardins de Claude-Monet)は、モネが生涯愛したアトリエ兼住居です。1883年、すでに印象派の中心的画家として、成功し始めていたモネは、家族と一緒にこの村に移り住みました。
産業革命の真っ只中のパリは、人口も増え、騒音や鉄道の煙に象徴される近代都市の様相を強めつつあり、多くの印象派の画家たちは、明るい陽光と静けさを求め移動しました。
モネも例外ではなく、彼が求めたのは、静けさと澄んだ光、そして自然と共に生きる生活でした。
農家風の古い家を整え、自ら庭を設計し、池や花々を「生きたアトリエ」として育てあげます。ここで彼は約40年を過ごし、睡蓮をはじめとする数々の傑作を生み出しました。
モネの家と庭園は、「モネの家」「クロ・ノルマン(Clos normand / ノルマンディ風の囲い庭)」「水の庭(Jardin d’eau)」の3つの要素で構成されています。
「水の庭」には、セーヌの支流エプト川を引き込むという大規模な工事を施し、日本風の太鼓橋を架け、柳、藤棚なども配置。特に睡蓮にはこだわり、様々な種類を集め、連作を描くために睡蓮が動かないよう配置にもこだわり植えたと言われています。そして、時間を変え季節を変え、何度も何度も描き、移りゆく光や空気を捉えたのです。
モネにとって、芸術と自然は、生活そのもので、この庭は、彼自身が構想した「芸術作品」でもあり、後年の大作《睡蓮》連作へと至る原点となりました。
モネの有名な言葉があります。” En dehors de la peinture et du jardinage, ne suis bon à rien ! ”(絵を描くことと庭仕事以外には、私はまったく役立たずだ)絵と庭仕事に情熱を注いだ彼らしい言葉です。
これからは秋の花で満たされます。9月はダリアとナスタチウム。10月はルドベキア、クフェア、ユリオプスなど。しだれ柳は黄橙色に色づき、モミジバフウは燃えるような赤に染まります。
*庭園の開館期間:4/1〜11/1 HP要確認
妹尾優子
仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「Lecture de l’aprèsmidi」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
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