もち=大福!?家族の思い出の味をフランスで再現

【今月のお客様】
基代乃 さん
2022年よりオンライン店舗やイベントでの販売を続けている「Oh! Mochi」店主の基代乃さんは、フランスのアンジェから30km南へ下った、自然豊かなフェイ=ダンジュ(Faye d'Anjou)村で20年ほど前から家族と一緒に暮らしています。伝統的な日本の大福をひとつひとつ丁寧に手作りする基代さんにお仕事について伺いました。
不動の人気メニューは
和風4種
- 元々、料理教室を開いていたとか?
2012年から日本料理の教室を自宅で開いていたんですが、コロナになって教室が一時中断してしまい、他のお仕事の手段を考えていたときに、こちらのスーパーで売られているおもちを見つけたんです。雪見だいふくみたいでまずくはないんだけど、これはちょっと違うんじゃない? と思って、試しに大福もちを作り始めたところ、結構フランス人のお友達にウケが良かったんです。それから真剣に考えだして、研究して、2022年に「Oh! Mochi」を立ち上げました。
- フランス人は大福を知っていますか?
フランスでは、もち=大福という感じで、理解されているんです。だから、「もちはパンと同じような言葉で、パンにもいろいろ種類があるようにもちにもいろんな形があります。私達が作っているのは、大福もちって言うんですよ」って説明しています。
フランスではおもちの食感が嫌いな人はやっぱりいるんですよ。あんこの豆はメインディッシュに使うものと思いがちな方もいるのですが、それを乗り越えた人は、あんこのおいしさを分かってくださるんですね。
- 一番人気のメニューは?
一番人気は、やっぱりあんこと、抹茶と黒ゴマ、ゆずですね。それ以外に味噌、しょうが、ほうじ茶、きなこがあって、それぞれファンがいます。ほうじ茶
も抹茶の人気を追いかけるように人気があります。チョコとか洋風のものも使うんですが、基本は和風を忘れない味にしたいなと考えています。
- 材料はどんなものを使っているんでしょうか?
私が作っているのは牛皮からつくる大福なんです。牛皮はもち粉で作られていて、柔らかさを調整しやすいんですよね。材料は、bioの専門店や日本の食品代理店とか、アジア系マーケットで気に入ったものを試してそろえています。あずきはフランス産の有機栽培のものです。
- お一人で作っているんですか?
はい。手作業で作っています。大変ですよ。常時8種類に加えて旬の味を1,2種類作らないといけない。量にもよりますが、だいたい一日に最高200個くらい作り、6時間くらいは時間をかけています。家族は良い試食者で、結構食べてくれたかな。お客さんとのやりとりや、計量や包装も家族は手伝ってくれますよ。
誰かの思い出になる
大福をつくりたい
- フランス人は大福をどんなふうに食べていますか?
やっぱりデザートですね。私は日本茶で食べるのが好きなんですけど、コーヒーにも紅茶にも合うし、シャンパンに合うって方もいるんですよ。大福を小さく切って、それをお酒のつまみにという感じで。
- 基代乃さんには小さい頃の思い出の味があるとか?
小さい頃に毎年家族が集まって、杵と臼でおもちを作っていたんですね。叔母が手作りのつぶあんをお鍋いっぱいに用意するんですよ。それがすごくおいしくて、私はそれを目指してるのかなあ。私の場合は大福づくりはいろいろな思い出から成り立っている。誰かの思い出になれたらいいな、とも思っています。
- フランスに移住したきっかけは?
出身は静岡県なんですが、上京して輸出業務のOLとして働いていたときに、出会った男性がフランス人で、その人と結婚して、家族をもって、子どものためにも自然が多いところに行ってみようかと。だから子どもの教育のためかな。長男が6歳、次男が4歳のときです。ここでは庭に鹿が来るんですよ。この前は4匹いました。東京の暮らしと全然違うので、最初はびっくりしましたね。郵便局は昼に閉まるし、バスが一日2本だし。主人はこのくらいの自然が欲しかったみたいですけど、子どもはわりとテレビゲームで遊んだりもしてました(笑)。
- 生産中はどんな感じ?
楽しいですよね。生産中は家にこもりっきりで、ほとんど外に出られないんですよ。時間がなくて。でもイベントでお客さんと直に話せるので、すごく楽しいです。フランス人はお話するのが本当に好きですしね。こわごわ買ってくれたお客さんが、また買ってくれたり、ポエムみたいなメッセージをメールでくれたり。本当に嬉しいし励みになります。そんなお客さんのために、これからも品質の維持は絶対かなと考えています。