ニューカレドニアを経て来日徳島で唯一のフランス人宮大工

【今月のお客様】

ジェンダ・アレクサンドル さん

今回ご紹介するのは、徳島県で宮大工として働くジェンダ・アレクサンドルさん。徳島の宮大工としては唯一のフランス人として、情熱をもってお仕事をされています。副業として長年過ごしたニューカレドニア産のバニラとはちみつの輸入業も続けているアレクサンドルさんに、フランス人から見た宮大工のお仕事やこれまでの軌跡を伺いました。

一人前になるには 10年かかる

 元々、ニューカレドニアで大工やリフォームのお仕事もしていたし、自然の中で作業するのが好きだったから。でも徳島では僕の大工仕事の写真を見せると「おーすごいわ!」って言ってはくれるけど、それだけ。最初は仕事をもらえなかった。今の宮大工の会社は、紹介してもらって働くことになりました。小さい会社だけど先輩はすっごく優しいし、とってもいい会社です。

主にお寺の回廊、濡れ縁、柱などの敷地内周辺を直したり、お寺とは別に木材で机やオブジェを作ったり。だいたいは建物のメンテナンスが多いかな。すごく難しい仕事で、一人前になるには10年くらいかかるって先輩は言ってた。宮大工は木材の勉強もしないといけない。木を削るのもどこまで削るかとか、木が気候に慣れているから、徳島の木は徳島の神社や寺にしか使わないとかね。あとは、ノミとかカンナみたいに用具についても勉強しないといけない。そんなに簡単ではないよ。

会社の先輩が直接教えてくれるんです。僕は53歳だけど、宮大工はみんな年上で60~85歳までいる。宮大工は細かい仕事だから、やり直すことがすごく多い。僕達の会社は柔軟な教え方だからいいけど、時々すごい厳しい会社があるから、今の若い人なら逃げるよ(笑)。四国では外国人の宮大工は 僕以外には会ったことないな。

 考え方はちょっと古いところもあるけど、場所はいいよ。山や海があって、僕が前にいたニューカレドニアに似てる。自然が多いしね。日本の都会に住むのは厳しいかな。遊びにいくのはいいんだけど、1週間いるともうダメ。緑が少なすぎてね。

フランスの「怠け者」思考は 苦手!?

僕の親戚は、ニューカレドニアとフランス両方に住んでいて、僕のおじいさんはフランス海軍としてニューカレドニアに行ったんです。僕の出身は南仏のニース。20歳の時、ニューカレドニアの自然が多いところが気に入って、住むことにしたんです。新しい友達もできて、24年くらい過ごしていたんだ。そこで奥さんに会って、結婚して子どもが生まれたんだけど、当時の仕事は面白くなくなってきたし、僕の人生では新しい刺激が大事だからね、仕事を辞めて、新しくバニラとはちみつの輸出のお仕事を始めたんです。ニューカレドニアのはちみつはすごく特別だし、味は素晴らしい。農薬も使ってないんだ。この日本への輸出の仕事は今でも副業として続けています。

最初は日本とニューカレドニア両方に住みたかったのね。でもコロナ禍になって日本に住むことに決めました。それでよかったと思っているよ。日本は住みやすいんだけど、いつかまた別の場所に住みたい気持ちも残ってるね。

今は慣れすぎて答えるのが難しいなあ。日本は働きかたがハードだからヨーロッパ人には合わないと思います。たまに「日本好き」って子もいるけど、働きかたが合わなくて帰る人が多いね。フランス人はいつも楽しい!がいいからね。僕は逆にフランス人の怠け者の考え方がちょっと苦手かも(笑)。仕事で日本人といる時は、頭が日本人モードになるんだけど、家族といる時は、自分モードになるかな。子育て面ではうちは子どもの寝室を両親と一緒にして日本式で育てたけどあんまり問題なかったね。

徳島に住んでいるフランス人は20人もいないと思う。ワーキングホリデーで来る若い子はいるけど。そのフランス人の8割は学校の先生で、英語でしゃべる。日本語はしゃべれない。その中で阿波弁がしゃべれるのは、僕を入れて2人くらいかな。

輸出業についてはいろいろ難しい部分もあるけど、続けていきたいと思っています。あとは、宮大工のほうはもっとやりたい! 会社の仕事だけじゃなくて、木材から自分のイメージでいろいろ作ってみたい。まだ決まってないけど、頭の中にはもうあるんだ。他にも奥さんと一緒に「世界の旅マルシェ」って食のイベントを開催しているんだけど、徳島人に面白いものを作ったり、大人だけじゃなくて、子どものためのものを作ったりしていきたいな!