ノアゼットプレス10周年を迎えました

 なんとノアゼットプレス、発行10周年を迎えました! 2014年からスタートし、まさかこんなに続くとは。続かないと思っていた訳ではないけれど。見切り発車だった訳ではないけれど。創刊から6ヶ月後に第一子の出産をしたのですが、今思えば、生まれる前に始めてよかった。生まれた後だったら毎月、ライターさんとやり取りし、原稿を書き、編集さんデザイナーさんとやり取りして印刷して……やれるわけないと尻込みしていたことでしょう。子育てがかなり体力や時間を奪うものだとわかっていない、出産前のお気楽野郎が走り出して早10年。締め切りに間に合わず原稿が落ちそうなことは数えきれないし、これはもうダメかもというピンチに数々の救世主が現れ、瀕死のところを助けていただきました(今も)。そろそろ香油とか持って詣でなければいけない。もはや何ガロン必要かわからない。タンカーものです。本当にありがとうございました。書いていて泣きそう。一人だけ盛り上がる情緒不安定な42歳。

 思えばこの120号でほぼ120人の方に巻頭インタビューしたことになりました。ライターの守隨さんもよくこんなに見つけてきてくれました。優しい犬みたいな見た目の守隨さんがこんなに頑張ってくれるとは。あなたにも香油を差し上げます。彼はインタビュー相手探しに難航してちょくちょく弱音を吐いてきますが、私は粘着質の中年なのでまだやめません。そこのあなた、いつ守隨さんがインタビューお願いに来るかわかりませんよ! 首洗って待っていてください。それにしても10年後に10キロ太って江頭2:50のYouTubeを朝から晩まで見ている頭おかしい42歳になるなんて思ってもみなかった。未来って読めないものだと痛感しています。アメリカの有名な司会者が「肥満なのは自分の性格のせいではなく、脳のせい」と開き直っていて感動したので次の10年間はこのフレーズを使っていこうと思います。


 ところで12月は夫の誕生月で、鎌倉へ行ってきました。物価高で、ステキな物を買うより美味しいものを食べるほうが支出が少ないよね!と蕎麦好きな夫にからすみ蕎麦を食べさせようと人気店を予約。お金を水洗いすると年収アップできるという銭洗弁天でこれでもかと野口先生を洗った後、子どもの熱望で人力車に乗車。驚異の4人乗りで、それを引く超人ハルク兄さんのパワーもさることながら子どもを抱く親の腕力も褒められていいと思う。腕が限界を迎えるころ、予約時間ピッタリにお店に到着。

 我ながら無駄のないスマートなスケジューリングとほくそ笑み、お店の人に名前を伝えると「……」。こういうとき筋金入りのおっちょこちょいだと空気でわかる。日付間違えた香りがプンプンする。ビンゴ!!明日の予約取ってた! 家族も慣れたもので、「久々に来たねコレ!」と乾いた笑い。お店の人にそこをなんとかと頼むと、外で待つこと40分。鎌倉の海風むっちゃくちゃ寒かった。風邪気味の夫を祝うつもりが打ちのめしていくスパルタクススタイル。洗い髪じゃないけど芯まで冷えたし、石鹸じゃなくて歯がカタカタ鳴ったし。からすみ蕎麦が美味しくなかったら優しさが怖いって言って泣いちゃうところでした。


吉野亜衣子

ラジオ局を辞め、夫の留学についてパリへ。帰国後、日仏文化交流のための NOISETTEを設立。2022年で設立10周年。

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