赤ちゃんから大人まで!フランス人店主の淹れるお茶でのんびり時間を

【今月のお客様】
ギヨーム・ユルポー さん
2023年にパリ郊外にオープンしたカフェ併設の日本茶専門店「Chanoki(チャノキ)」。店主は日本茶の歴史に詳しいフランス人ギヨーム・ユルポーさん。小笠原流煎茶道にも精通しているユルポーさんに、人気の銘柄や現代のフランスのお茶文化について伺いました。
博士論文テーマのアイディアは
テレビ番組から!?
- お店ではどんなお茶を出しているんですか?
置いてある商品の90%は緑茶です。ちょっと珍しいお茶、例えば寒茶(寒い時期に収穫された茶葉から作られるお茶)とか、釜炒り番茶とか、ある地域だけで生産しているお茶はすごく興味があるので、こういうお茶も出しています。味も全然違います。お客さんにおすすめを聞かれることもよくありますね。
- 茶葉の買い付けもご自身で日本に行かれるんですか。
はい。年に1回で、時間がたっぷりあるわけじゃないけど、生産者にも会いに行きます。生産者は、京都、奈良、滋賀、四国、静岡にいて、一人か二人は会いに行ける。時間があったら、もっと行きたいんですけどね。
- 日本に留学されていたとか?
はい。文部科学省の奨学金で研究生として2年半ぐらい大阪大学に留学していました。学術だけでなく、文化芸術の知識も知りたかったから、小笠原流煎茶道も始めたんです。博士前期課程の時に、論文のテーマを決めなきゃ
いけなくて、最初は経済史について研究したかったんだけど、その時にテレビでお茶についてのドキュメンタリーを見たんです。面白そうだなあと思って、テーマを「江戸時代における製茶生産と農法技術」にしました。フランスにはこういう研究がなかったんです!
- 店名の由来は?
お茶の木のことを専門書ではよく「茶樹(ちゃじゅ)」と言うんですが、同じ意味で「茶の木」はどうかなと。他にあんまりアイディアが浮かばなかったのもあります(笑)。フランス人が発音しやすいし。シャノキってよく言われるんですけど(笑)。
フランス人に受け入れられる
お茶菓子って?
- フランス人は日本のお茶に興味ある? コーヒーの方が好き?
興味あると思います。コーヒーは結構飲んでるけど、お茶はイギリスよりも飲んでないね。フレイバーティーはかなり人気だけど。意外と番茶も見る人が多い。多分お茶を飲み慣れてない人はほうじ茶なんかが飲みやすいからかな。淹れ方に詳しくなくても、すぐに飲めるほうがいい。
- 一番人気のお茶は?
抹茶ですね。緑茶が好きじゃない方は、玄米茶を飲まれます。お米の味がして、ちょっと甘くて、煎茶みたいじゃないから。夏は水出し緑茶や冷茶ですね。抹茶は好きじゃない方も多くて極端です。私が抹茶をたてることもありますが、抹茶ラテもあります。こちらはお客さんの好みに合わせて甘くしたりできますよ。
- カフェではお茶以外の食べ物もありますか。
大福、あと金平糖と甘納豆も出してます。この二つは日本から輸入していて、大福はアンジェ近郊に住む日本の方が作っていて、みんな喜んでいます。あんこ、黒ゴマ、きな粉、柚子、生姜、ほうじ茶味があります。金平糖は珍しいからお客さんがびっくりしていました。フランス人にとってあんこは少し不思議な食べ物なので、ぜんざいは難しいけど、おもちに包まれていたら大丈夫! 私はぜんざい出したいけどね(笑)。今は昔よりもあんこのイメージがフランス人にも定着していると思います。
- お店を出そうと思った理由は?
当時、マレ地区のお店で働いていて、人が多くてすごく忙しかった。だから妻の妊娠がわかった時に、「こういう人生はもう嫌だからやめます」とお店を辞めたんです。今は2歳の娘と一緒にいられるし、週末は娘もお店の中で遊んでる。日本には子連れで行けるお店がありますが、フランスはそんなにない。私は赤ちゃんと一緒に来てほしいし、赤ちゃんが泣いても構わない。そういう雰囲気を作りたかった。お茶は一番大事だけど、みんなに来てほしいんだ。
- お店をやっていて一番嬉しいことは?
やっぱりお客さんに美味しいって言われるのは一番嬉しいかな。私の好みと、お客さんの好みが合ってるってことだから。今は、ワークショップや、オンライン販売、インスタのおかげで、去年よりもお客さんが増えてきた感じがします。
これからはいろんなお茶についての本も、マンガ喫茶じゃないけど、お店で手に取って読めるようにしたいな。あとは、一つの村でしか作ってないような珍しいお茶もいずれは出していきたいです。
